2035年に内燃機関自動車ゼロを目指す中国

業界情報

◆習近平中国国家主席、国連総会でカーボンニュートラルを宣言

2020年9月の国連総会の一般討論演説で習近平主席は、「30年までに中国はCO2排出量をピークアウトさせ、60年までにカーボンニュートラルを達成するよう努力する」と述べた。世界最大の温暖化ガス (GHG) 排出国の野心的な宣言実施は今後各国の行動の背中を押すのは間違いない。また、「パリ協定」から離脱した米国も政権交代により、協定への復帰可能性が高まっており、今後の各国の温暖化対策が加速する可能性はかなり高そうだ。

この宣言に合わせるがごとく、10月27日に工業・情報化部系の中国自動車エンジニア学会がNEV (新エネルギー自動車) ・省エネ車に関する技術ロードマップを発表し、さらに11月2日に国務院弁公庁が「新NEV産業発展計画 (2021~35年) 」を発表した。技術マップは、35年の新車販売のすべてを電動車とし、その半分ずつをNEVとHEV (ハイブリッド自動車) に、さらにガソリン車などのICE (内燃機関) のみで動く自動車を廃止する目標 (棒グラフのブルー部分参照) を掲げている。

図1 中国:新車販売におけるNEV・省エネ車目標占有率 (%)
(出典:中国自動車エンジニア学会のコードマップより)

◆最終年迎える「省エネルギー車・NEV産業発展計画(2012~20年)」(第1次)

第1次NEV計画 (2012~20年) が発表されたのが12年。当時は既存の複雑で高度な技術が要求されるICEを必要とする国内自動車産業の育成が不調に終わったため、NEVへ計画をシフトせざるを得なかったと見る向きもあった。実際にはNEVは中央と地方政府の補助金政策の効果などで順調に販売を伸ばし、18年には124万台 (新車販売に占める比率4.4%) となった。中国は15年以降NEVの生産・販売台数で世界第1位の地位を占めている。18年にNEVは124万台となり、その8割をBEV (純粋電気自動車) が占めた。

図2 中国:新車販売台数推移 (年次)

ただ、19年は6月末に地方政府の補助金が打ち切られたため、下のグラフのように7月 (赤丸) 以降販売が落ち込み、年間の販売台数は120万台 (比率4.7%) に留まり前年割れとなった。

図3 中国:NEV販売台数 (月次) (出典:CEIC Data)

また、第1次では補助金を20年に打ち切る予定だったが、販売台数の落ち込みを受けて急遽2年間の延長を決定した。車両価格30万元を上限とし20年は19年比10%削減 (航続距離400キロ以上で2万2,500元など) とし、21年は20%削減、22年は30%削減で継続することとなった。さらに自動車購入税 (10%) の免除も22年まで継続となっている。

20年は、新型コロナ感染症の拡大などで、新車販売台数が年初に落ち込んだが、地方政府による新車買い替え補助金の支給や、政府によるインフラ投資の拡大により、商用車中心に需要が増え、20年10月の新車販売台数は前年同月比12.5%増の257万台、7ヵ月連続のプラスとなった。また、NEVも各地でナンバープレートの発給制限の緩和や農村での補助金による購買促進により、16万台と前年同期比で2倍を上回り、4ヵ月連続で前年実績を上回っている。ただ、1~10月期の累計販売は87万台にとどまり、計画の200万台には程遠く、110万台止まりとの予想もある。

図4 中国:新車販売台数とNEV比率 (月次) (出典:CEIC Data)

◆国務院弁公庁発表の第2次「NEV産業発展計画(2021~35年)」骨子

11月2日に国務院が発表した第2次の21年から35年までのNEV発展計画は、技術ロードマップをベースに第14次五ヵ年計画 (25年まで) に基づき、NEV産業の競争力を強化するというものだ。特に電動化、コネクテッド化、スマート化を推進し、直近の目標として25年に現状5%のNEV比率を20%に高め、BEVの平均消費電力も12kWh/100km以下に抑える。35年には、BEVを新車販売の50%以上を占める主流とし、PHEV (プラグインハイブリッド自動車) 、FCEV (燃料電池自動車) といった環境重視型のNEVを拡大させるとともに、充電施設網などのインフラの技術・設備の充実を図っていく。また、公共交通管理システム、融資などの金融面でのインフラ建設支援などの優遇策も実施し、35年には新車販売におけるICEをゼロにするというものだ。

◆ICEゼロに向け、HEVを低燃費車として新たに優遇

中国の新車販売台数は17年の2,894万台をピークに、18年2,803万台、19年2,575万台と減少を続けている。仮に2,500万台ペースで横ばいが続くとすると25年のNEV台数は500万台、HEVは100万台の目標販売台数となる。

20年6月に21年1月からHEVを新たに「低燃費車」として位置づける優遇措置も決まった。中国市場でHEVを累計100万台販売しているトヨタは、中国メーカーに協力すべく19年にHEV関連の特許の無償提供を開始している。これまで中国政府は、HEVに関してはNEVとして認めてこなかったが、現状の中国の電力構成は比率が下がりつつあるとはいえ、石炭火力が6割と大きな割合を占めており、NEV比率を高めても必ずしもGHG排出量の低減につながらないことや、安全保障面での石油の輸入減、排ガス問題なども考慮し、ICEゼロを視野に入れ、HEVという現実的な路線を選択したと推察される。

◆BEVだけでなくFCEVの展開も視野に

第14次五ヵ年計画では、水素エネルギーやFCEVの革新技術の発展、技術の成熟度向上、FCEV商用車技術の進歩や産業発展に向けた支援策も織り込まれている。既に北京市、上海市などでは、バスやトラックなどの商用車中心にFCEVが利用され、中国全体で7,000台以上が普及している。日本は20年度までに累計4万台のFCEVの普及を目標に掲げているが、19年度末までに4,000台程度にとどまっており、FCEVの開発・販売では先行したが、実績では中国に追い抜かれてしまっている。

上海市は23年までにFCEVを1万台普及させる方針を立て、水素エネルギーの年間生産量2万トン超、水素ステーション100ヵ所の設置を目指しており、NEV産業の発展支援は、BEVだけでなくFCEVに対しても実施される。

◆低価格国産BEVの登場と国内生産BEVの輸出

いち早く新型コロナ禍から回復しつつある中国経済だが、新車販売市場はNEVもICEも政府の支援策に依存している部分が大きい。ただ、NEV関連の国内産業基盤はかなり競争力を付けてきているのも間違いなさそうだ。

BEVの車両価格の1/3を占めるといわれるリチウムイオン電池だが、第1次NEV計 画の期間中に寧徳時代新能源科技 (CATL) が世界1位のポジションを占めるようになった。これ以外にも国軒高科、ファラシス・エナジー (孚能科技) など強力なリチウムイオン電池メーカーが育っている。リチウムイオン電池市場で首位を争うLG化学も中国国内で工場を稼働させている。

また、国内生産のBEVの品質も向上してきている。米テスラは上海工場で生産した「model3」 (約500万円) を10月から欧州への輸出を開始。21年には上海工場で55万台を生産し、11万台を欧州へ輸出する計画だ。独BMWは遼寧省の華晨との合 弁工場で新型BEV「iX3」 (約800万円) を生産し、21年初に欧州へ輸出を開始する。また、ルノーは「ダチア・スプリング・エレクトリック」(約190万円)を日産・東風自動車の合弁工場で生産し、欧州で販売する。浙江吉利傘下のポールスター (ボルボ系) は「ポールスター2」 (約700万円) の輸出を開始し、ノルウェーで販売ランク3位となるなど、EVの輸出拠点としての中国の存在感が増している。

中国国内販売では、上汽GM五菱が航続距離120kmという街乗りに割り切った4人乗り「宏光MINI EV」を、2.88万元 (約46万円) という価格で販売を開始した。テスラのmodel3を抜き9月 (1.4万台) 以降NEV販売の首位を占め、11月は3.3万台を売り上げた。第1次計画期間中は中国のNEV市場は、生産台数≒販売台数だったが、今後は販売台数だけでなく、世界市場への供給基地としての生産台数にも注目する必要がありそうだ。

この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの森山博之が執筆したものです。

用途事例

セル間スペーサー

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バッテリーのセル間に使用する絶縁部品

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・耐加水分解性
・耐酸・アルカリ性
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特長

・筐体に適した設計自由度の高い素材です。
・クリープ特性、難燃性(ノンハロゲン)、寸法安定性に優れた低比重材料です。
・薄肉成形性も良好で、省スペース・軽量化に貢献します。

用途事例

エンドプレート

エンドプレート

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エンドプレート

製品

レオナ™

グレード

SNシリーズ SN11B他
GF強化非ハロ難燃V-0

特長

・成形加工性
・レーザー印字性
・強度・靭性
・電気特性(CTI)
・耐熱性

用途事例

高電圧コネクター

高電圧コネクター

EV用高電圧コネクター

製品

グレード

SNシリーズ SN11B、SN105他
GF強化非ハロ難燃V-0

特長

・成形加工性
・レーザー印字性
・強度・靭性
・電気特性(CTI)
・耐熱性