カーボンニュートラル実現に
必要な冷媒対策

2021.10.08

業界情報

米中は温室効果ガスのHFCを削減する条約の批准で合意

2021年4月、米国と中国は、モントリオール議定書の「キガリ改正」の批准に合意した。モントリオール議定書はオゾン層破壊物質を規制する目的で89年に発効されたが、16年のルワンダのキガリで開催された改正会議で、温室効果ガスを有するHFC(ハイドロフルオロカーボン)の追加が採択された。HFCはエアコンや冷凍機器の冷媒などに用いられるが、キガリ改正の目標通りに利用を削減できれば、地球温暖化を最大で0.4℃抑止できると国連環境計画が試算しており、パリ協定目標にも影響のある国際条約である。

経産省・環境省合同会議資料,2021.4

(出所:経産省・環境省合同会議資料,2021.4)

代替フロンのHFCは日本でも大気排出が増加している

国連気候変動枠組条約締約国会議は、温室効果を持つフッ素系化合物を「Fガス」として97年の京都議定書で取り決めた。そのなかのHFCは冷凍空調機器の冷媒に主に使用される。世界のGHG排出量のうち、Fガスの比率は現状では約2%に過ぎないが、成り行きで増える傾向にある。冷媒に関し、1)機器は数十年単位で使用され冷媒もそのまま使用される、2)使用中の漏れ、解体時の回収が進まない、3)途上国中心にエアコン需要が増える、4)機器に省エネ性能を持たすためにHFC冷媒の利用が望まれる、などの課題がある。
日本では、冷媒がオゾン層破壊物質HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)からHFCに移行した冷凍空調機器が廃棄時期を迎え、Fガス排出が増加している(次頁図)。日本のGHG排出量のFガス比率は09年2.3%から19年4.6%になった。

経産省・環境省合同会議資料,2021.4

※代替フロン等4ガス=Fガス      (出所:経産省・環境省合同会議資料,2021.4)

 

日本のカーボンニュートラル宣言を受けたHFC対策として、21年4月、経産省と環境省は、1)キガリ改正の履行、2)グリーン冷媒機器普及拡大(自然冷媒主流化、超低GWP冷媒開発など)、3)HFC排出ゼロ・サーキュラーエコノミーの確立(稼働時の漏洩をゼロとし、回収率を100%とする)、4)国際活動や新技術提供などの国際協力の推進、を示した。

冷媒の管理は確実性のある温暖化対策で最も効果が大きいと示される

確実性のある温暖化対策として、最も効果が高いのは、世界で広く使用されている冷媒の管理(漏出、処分など)にあると、米国の環境活動家ポール・ホーケンは編著の「ドローダウン:地球温暖化を逆転させる100の方法」(17年4月出版、日本では20年12月出版)で主張する。同書では22ヵ国70名の研究成果を120名が評価し、エネルギー、食料、教育、建物と都市、土地利用、輸送、材料の8つに分けて整理した上で、GHG削減効果順にランキングしている。冷媒管理で現在使用されているHFCを大気放出させないことの効果は大きく、20年から50年の間で89.74ギガトンの削減効果があると示されている。

  確実性のある温暖化対策 累積GHG削減効果 CO2ギガトン
(確実性のある対策における比率※)
1位 冷媒の管理:Refrigerant Management 89.74 (8.5%)
2位 陸上風力発電:Wind Turbines (Onshore) 84.60 (8.0%)
3位 食料廃棄の削減:Reduced Food Waste 70.53 (6.7%)
4位 植物性食品を主とした食生活:Adoption of a Plant-Rich Diet 66.11 (6.2%)
5位 熱帯雨林の再生:Tropical Forest Restoration 61.23 (5.8%)

※確実性のある温暖化対策の20年から50年の累積合計1,051 CO2ギガトンにおける比率
(「ドローダウン:地球温暖化を逆転させる100の方法」,ポール・ホーケン編著よりARC作成)

 

日本はキガリ改正にそった国内冷媒対策をまず行い、冷媒の回収率向上、冷媒転換などで国内HFC排出を減らすことが肝要である。さらに、冷凍・空調機器の開発企業を有する日本には、グリーン冷媒機器の開発などを促進し、冷媒管理や技術力で温暖化対策に貢献する道が考えられる。

この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの 新井喜博 が執筆したものです。

 

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