空飛ぶクルマが4年後にも日本で実用段階へ

2021.12.01

業界情報

JALが2025年に空飛ぶクルマで旅客輸送事業実施へ

2021年7月、日本航空(JAL)が空飛ぶクルマによる新事業を25年にも立ち上げることが明らかになった。三重県で空港と県内を結ぶ旅客輸送サービスを行う計画で、中部国際空港と伊勢志摩などの観光地を結ぶ想定をしている。JALと三重県は、15年に観光振興などの連携協定を締結していたが、21年4月に、次世代モビリティとワーケーション推進の2分野を協定に追加したと発表していた。

ヘリコプターを用いる同様の事業は以前から存在していた。空飛ぶクルマには明確な定義はないが、経産省では「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」を正式名称にしている。「電動」「自動(操縦)」「垂直離着陸」の3条件が必要であり、ヘリコプターは該当しない。

各国の企業による開発競争が激化、40年には市場規模が1兆5千億ドルとも

空飛ぶクルマは欧米や、中国、日本などで開発がさかんになり、実用化を見据えたものも多くなっている(表1)。モルガンスタンレーは40年までに市場規模が1兆5千億ドルに達すると予測している。JALは19年に設立したCVCを通じて、ドイツのボロコプター(写真1)に出資し、日本での安全運航に対するノウハウなどで支援している。三重県での実用化検証についてはこの機体が使用されると思われる。トヨタは元ウーバーの事業部門であったジョビー・アビエーションに出資している。トヨタ系のデンソーは21年5月、電動航空機用推進システムの事業で米ハネウェルと共同開発を締結し、22年に電動航空機用推進システムの試験飛行を実施する予定だ。このシステムはジョビーの機体に採用されるとみられる。

空飛ぶクルマ開発例表1:各国での空飛ぶクルマの開発例 出典:各種資料を元にARC作成

ロボコプター写真1:ボロコプター 出典:同社

日本のスカイドライブ(写真2)は、トヨタの技術者などが中心に起業し、機体を設計したものだ。20年に予定されていたオリンピック開会式での有人飛行は実現しなかったが、20年8月に4分間の有人でのデモフライトをしている。

スカイドライブ写真2:スカイドライブ 出典:筆者撮影(20年11月)

性能の向上や安全性、法整備など実用化には課題も多い

実用化には課題も多い(表2)。空飛ぶクルマの構造はドローンと似ているが、重量物の運搬と安全性の点から回転翼は大きく、個数も増えることが多い。そのため電力使用量も多くなり、電池の高容量化、軽量化、また車体の軽量化は極めて重要だ。電池については当面は全固体電池などが中心になると思われるが、将来的には次世代の空気電池などの実用化が欠かせない。また、水素を燃料とする燃料電池の利用を構想している企業もある。車体の軽量化には炭素繊維系の複合材料が中心になると思われる。東レは炭素繊維系複合材の航空機用に続く用途として、空飛ぶクルマ用や風力発電用の羽などを挙げている。操縦者が同乗する場合でも、ヒューマンエラーを考えると自動操縦を基本にするべきだろう。人命がかかわるだけに、二重三重の安全システムも必須だ。法的にも人家の上空の飛行や空域設定、免許制度など航空法の整備が必要だ。このように課題は多く、今後関連技術も含め、開発や実用化の先陣争いがますます激化しそうだ。

空飛ぶクルマの課題表2:空飛ぶクルマの実用化への課題 出典:各種資料を元にARC作成

この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの 松田英樹 が執筆したものです。

 

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