サーキュラーエコノミーを脱炭素に繋げる条件

業界情報

耐久消費財のサーキュラーエコノミーを脱炭素化につなげる条件を分析

国立環境研究所と東大の研究チームは、2021年12月、大型家電、ICT機器、工具類、自動車、書籍、衣類などの耐久消費財に対して、シェアリングやリユースなどのサーキュラーエコノミーの各手法を適用した場合のGHG削減効果の分析結果を発表した。100件の世界的学術文献を選定し、約1,500のGHG削減シナリオを系統的文献分析レビューの手法で定量化したものである。

全製品について統合分析した結果において、シェアリング、リユース、サービス化の手法が適切に導入された場合に、高いGHG削減効果が示された。また、プーリング、リファービッシュ、アップグレード、修理による削減効果は、中~高程度が見込まれた。

ただし、シェアリング、リユース、サービス化、レンタルにおいては、意図しない要因でGHG排出量を増やしてしまうリスク「バックファイア効果」が高いことが明らかとなった。具体的には、製品の輸送増大、使用頻度増による低寿命化、維持管理における環境負荷の増加が伴う場合には、GHG排出量は逆に増加することが見出された。

サーキュラーエコノミーと脱炭素を両立するには、バックファイア効果の要因制御、例えば、低炭素輸送によるレンタル、地域内に限定したシェアリングなどの方法が有効であり、個々の耐久消費財の種類などの特性を踏まえた方法の優先順位付けを行うべきである、と結論づけた。

図:主な耐久消費財におけるサーキュラーエコノミー方法と脱炭素化の関係についての分析結果 出所:東京大学 プレスリリースより 2021.12.17

  • 大型家電:リユース、リファービッシュ等によるGHG削減効果が見込まれるが、リユースとサービス化に関してはバックファイアの制御が課題
  • ICT機器:全般的にバックファイアのリスクが小さく、耐久性向上、リユース、レンタル、修理等を通したGHG削減効果が見込まれる
  • 工具類:地域でのシェアリングにはGHG削減効果が見込まれるが、長距離輸送のレンタルではバックファイアの懸念
  • 自動車:プーリング、レンタル、リファービッシュ等によるGHG削減効果が見込まれるが、シェアリング、サービス化のバックファイアの制御が課題
  • 書籍・メディア:サービス化、リユース、レンタル等を通じGHG削減効果があるが、シェアリングに関するバックファイアの懸念
  • 衣類:レンタル、リユースを通じGHG削減効果があるが、レンタルに関するバックファイアの制御が課題

 

注1)サービス化:製品販売に代わり消費者ニーズを満たすサービス.例えば、洗濯機に対するクリーニングサービス、書籍に対する電子書籍配信サービス.

注2)プーリング:製品サービスを複数の利用者が同時使用すること.例えば、同じ目的地に向かう複数の利用者が1台の自動車に相乗りするライドシェアリングサービス.

注3)シェアリング:事業者ではなく消費者の所有製品を他消費者に一定期間貸し出す消費者間シェアリング(C2Cシェアリング).例えば、近所の消費者同士が使っていない製品を貸し借りする。

注4)リファービッシュ(再整備)・リマニュファクチャリング(再製造):使用済み製品に含まれる素材を回収してリサイクルするのではなく、まだ使える部品や外装を再利用し、劣化部品等を交換し、点検・製造や品質管理を行った上で製品を再販売する.特に、リマニュファクチャリングでは新品同様の品質が保証される.

注5)アップグレード・モジュール化: 製品の外装や多くの部品をそのまま利用し、技術革新が早い一部の部品を交換し機能を向上させる.特に、モジュール化では部品交換をしやすい設計を行う.

サーキュラーエコノミーの構築が脱炭素化に大きく寄与する

サーキュラーエコノミーによる脱炭素化の重要性は、エレン・マッカーサー財団が19年9月に発表した「Completing The Picture: How The Circular Economy Tackles Climate Change」でも報告されている。再生可能エネルギーとエネルギー利用効率化による取り組みは全てのGHG排出量の55%に寄与するが、残りの45%に対しては製品の製造・利用の循環化によるサーキュラーエコノミーが必要であることを主張した。

また、サーキュラーエコノミーの先進国オランダの環境団体Circle Economyが21年1月に発表した「Circularity Gap Report 2021」では、サーキュラーエコノミーの取り組みで、世界のGHG排出量の228億CO2トンを削減でき(世界の19年のGHG排出の39%に相当)、気候変動対策に大きく寄与すると試算している。

脱炭素化の定量化がサーキュラーエコノミーの発展の推進力に

シェアリング、期限限定利用のサブスクなど「モノの所有から利用へ」の移行が進んでいる。また、使用済み製品を整備し再利用するリファービッシュ、リマニュファクチャリングなど、従来の3Rを超えた枠組みで製品を利用し続けるサーキュラーエコノミーには、資源枯渇を防ぐ意義が大きい。
それに加え、サーキュラーエコノミーの具体的な手段ごとのGHG排出削減を定量的に示すことは意義が大きく、脱炭素型の資源有効利用となる新たなビジネスモデルを形成する推進力になるであろう。

この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの 新井喜博 が執筆したものです。

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