EUは環境対応促進に
ラベル表示など活用
2021.07.09
業界情報
EUで「エネルギーラベル」の改正規則の適用開始
EUでエネルギー消費効率などを示す新しい「エネルギーラベル」の適用が、2021年3月1日に始まった。特定の製品への表示が義務付けられる。目的は、消費者に対しては、エネルギー消費効率が良い製品を選択しやすくさせること、製造業者に対しては、エネルギー消費効率がより良い製品の開発を促すことだ。旧ラベルは導入後25年以上が経過し、最上位「A+++」から「D」までの7段階中、90%以上の製品が「A+++」「A++」「A+」となっていた。
今回はラベルのデザインも刷新した。エネルギー消費効率の表示を「A」~「G」の7段階にし、基準も厳格化したため、従来の製品の大半が「B~D」となり、「A」を取得できる製品はごく一部に限られる。また、ラベルにはQRコード®*も付記され、製品のサイズ、特徴、製造元による保証、製品テストの結果などの追加情報の入手が容易になる。19年のEUの世論調査では、93%が旧ラベルを認識しており、79%が購入に影響したと回答しているので、新ラベルの効果も期待される。
3月1日から冷蔵庫・冷凍庫、家庭用食洗器、家庭用洗濯機・洗濯乾燥機、外部モニターを含むテレビ機器に適用され、9月1日からは電球や一部の照明器具に対象範囲が拡大される。さらに他の機器への適用の拡大も検討されている。
なお、EU市場に上市する製品は、「エネルギーラベルに関する欧州製品登録簿(EPREL)」と呼ばれるデータベースへの登録が義務付けられている。
これまでの表示(左)新ラベル(右)の例
出典:https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_818
EUは循環型経済に向け「エコデザイン」も改定、部品提供義務も強化
EUでは、エネルギー効率要件の改定、製品修理に関する消費者の権利強化などを盛り込んだ「エコデザイン」に関する改正規則も、3月1日から適用された。洗濯機、冷蔵庫、食洗器など10製品が対象となる。今回の改正で、製造業者や輸入業者には、製品が容易に修理できるように、修理用のスペア部品の提供義務が課せられた。製品により期間は異なるが、最低7~10年間、修理業者やエンドユーザー向けにスペア部品の在庫保証期間を設ける必要がある。EUが進める循環型経済では、使い捨てではなく修理することで、製品の長寿命化を目指している。
フランスでは電子機器の長寿命化を目指し、修理可能性のスコア表示
EU域内でも国によっては、既に独自の政策を進めているところもある。
フランスでは1月1日から、電気・電子機器の販売時に、修理可能性のスコア表示をすることが義務付けられた。これは、20年2月施行の循環経済法に基づき、消費者に対し修理の可能性を可視化することで、製品の長寿化を図るものだ。対象は、まずは洗濯機、ノートパソコン、携帯電話、テレビ、芝刈り機となった。
フランス政府は、故障した電気・電子機器の修理率を、現在の40%から5年後には60%までに引き上げることを目標に掲げている。
修理の可能性は10点満点で評価、色別でスコア表示する。0~1.9までが赤、2~3.9がオレンジ、4~5.9が黄、6~7.9が黄緑、8~10までが緑だ。
スコアの計算方法は、製品カテゴリーごとで規定しており、製造者または輸入者が自己評価・採点する。高い点数を取るためには、修理業者や消費者向けに、修理に必要な技術上の情報を提供と、スペアパーツを提供する必要がある。修理のハードルとなる接着固定されたパーツは、分解がしやすいネジ止めされたパーツより低い評価となる。表示義務を怠ると罰金が科される。評価基準は以下の5項目(critère)となっていて、各項目20%の割合で配点される。(次図参照)
1.提供される技術文書(メンテナンスに関する内容)
2.製品の分解の容易性、特別な工具の要否、パーツの取り外し、再利用可能性
3.スペアパーツの入手可能期間とその納期
4.製品の販売価格に対するスペアパーツの価格
5.製品カテゴリー特有の基準
フランスの修理可能性のスコア表示と計算例(Indice de réparabilité)
出典:
https://www.ecologie.gouv.fr/indice-reparabilite
https://www.indicereparabilite.fr/
ドイツはワンウェイプラスチックの表示を計画
ドイツは、21年2月10日、ワンウェイプラスチック表示令を内閣が承認した。市民の意識を高めるため、7月3日以降、プラスチックを含む製品の容器包装にわかりやすいラベルを表示する。ラベルが貼られていない製品は販売できなくなる。ラベルは、ピクトグラム(絵文字)と商品カテゴリを識別する文章で構成される。まずは、衛生用品(ウェットティッシュ、タンポンなど)、プラスチック含有フィルターを使用したタバコ製品、使い捨て飲料カップが対象となり、今後、他の製品が追加される。同令の施行には、連邦議会と連邦参議院の承認が必要となる。
飲料カップ(左)、たばこのフィルター(右)はプラスチックを含んでいるため、ポイ捨て禁止を警告するラベルの例示
出典:https://www.bmu.de/pressemitteilung/warnhinweis-fuer-wegwerfplastik-ab-juli-2021/
この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの 赤山英子 が執筆したものです。
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