グローバルな競争、
協力が加速する水素産業

業界情報

◆水素・燃料電池戦略協議会、今後の方向性について中間整理

経済産業省の水素・燃料電池戦略協議会は2021年3月、水素政策の方向性議論の中間整理をまとめた。20年12月のグリーン成長戦略では、水素産業は洋上風力などとともに重点14産業の一つに位置付けられており、2~3月には29社・団体からのヒアリングが行われた。日本は世界に先駆けて燃料電池自動車(FCV)や定置用燃料電池(エネファーム)を実用化してきたが、欧州はじめ世界各国が水素産業の発展を目指している。中間整理は、日本で進められる個別の取り組み間の連携を促し、相乗効果を出す必要があると指摘している。

協議会でのヒアリング先  (左欄は協議会開催月日)

2/9 パナソニック、JERA、三菱パワー、日本製鉄
2/19 電気事業連合会、東京ガス、大阪ガス、川崎重工業、千代田化工、三菱ケミカル
3/2 旭化成、日立造船、神戸製鋼所、東レ、東芝エネルギーシステムズ、丸紅
3/4 日本郵船、日本政策投資銀行、三井住友銀行、福岡県、水素バリューチェーン推進協議会、神戸・関西圏水素利活用協議会、中部圏水素利活用協議会
3/5 日本水素ステーションネットワーク、トヨタ自動車、本田技研、日野自動車、ENEOS、岩谷産業

◆欧州の水素利用は産業需要と商用車、日本は自動車と発電

日本と欧州の水素戦略を比較すると、水素製造について、欧州では再エネによる水分解で製造された水素のみをクリーン水素とするのに対し、日本は再エネ水素に加えて、化石資源由来で炭素回収・利用・貯留(CCUS)を組み合わせて製造された水素も含めて、クリーン水素として扱っている。
また、水素利用について欧州は、20年代は石油精製や化学産業など既存水素需要の再エネ由来水素への置き換えからスタートし、輸送用途ではバスやトラックなど商用車での利用を優先する。一方、日本では20年代後半に水素の大量供給システムを確立し、発電用途に取り組むとしている。さらに、水素の輸送に関しては、欧州では既存のガスパイプラインの活用が見込める一方、日本は海外からの大量海上輸送や国内水素ステーションの整備に力点が置かれている。

 

日欧の水素戦略の力点比較

日本 欧州
水素製造 再エネ水電解、化石由来+CCUS 再エネ水電解
水素輸送 海上輸送、水素ステーション パイプライン
水素利用 自動車、発電 既存産業需要の置換、商用車

水素エネルギー

◆水素の大規模社会実装には、海外からの水素輸入が不可欠

水素を社会実装していくには、水素コストが課題となる。水素を製造する水電解装置には、高効率、低コストで大型化が容易なアルカリ形と、小型化しやすく負荷変動への対応・調整力があるPEM形がある。出力変動があり、小規模分散な再エネ利用の場合はPEM形、大規模で安定した再エネ資源であればアルカリ形といった水素利用とコストのバランスが考えられる。
再エネは、日本では小規模でコストが高いが、海外の水力や地熱、太陽光などが豊富なところでは化石資源以下のコストが実現しつつある。そうした再エネ資源国に日本の水素製造技術を持ち込み、低コストの水素を大量輸入することで、日本国内の発電用途など大規模な社会実装につなげる道筋も示されている。

CARBON-FREE EXPORTER MAP

■ダークブルー:水素供給が不足するエリア

■ライトブルー:低コストで水素生産が可能

■グリーン:再エネ資源が豊富なエリア

(資料)HYDROGEN STRATEGY FOR CANADA(2020.12)

◆ENEOSや岩谷産業などが中東、東南アジア、オーストラリアで協業

ENEOSは21年3月、サウジアラムコとの水素サプライチェーン構築に向けた協業を発表した。LNGなど化石資源からの水素製造、製造時に発生するCO2の回収・貯留、アンモニアやMCH(メチルシクロヘキサン)などをキャリアにした海上輸送形態などをフィージビリティスタディ(FS)する。1月には、マレーシアで水力発電による水素製造、MCH変換後の海上輸送についてもFSを始めている。
また、川崎重工業や岩谷産業などは3月、オーストラリアで褐炭から水素を製造、液化するプラントが運転を始めたと発表した。褐炭から出る炭素の回収、貯留はオーストラリア政府が進め、日本側は液化水素を神戸まで海上輸送する。
中東やオーストラリア、東南アジアとの水素における協力が、新たな資源・エネルギー外交として注目されるかもしれない。

この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの 長谷川雅史 が執筆したものです。

用途事例

燃料電池

燃料電池

燃料電池を構成する部品(スタック周辺部品)

グレード

500H
・非強化耐熱グレード
・低溶出性
・耐酸性

特長

・樹脂からの溶出性(イオン、オリゴマー等)が少なく、高評価を得ています。
・耐熱水性、耐酸性に優れ長期間浸漬しても物性がほとんど低下しません。