ISCC PLUSなどマスバランス方式のプラスチック認証制度とは

ISCC PLUSやUL 2809など、マスバランス方式のプラスチック認証制度についてご紹介します。

マスバランス方式のプラスチック認証制度

マスバランス方式のプラスチック認証制度とは

マスバランス方式のプラスチック認証制度とは、原料生産から最終製品までサプライチェーン全体における製造・流通工程が持続可能な方式で管理されていることを証明するものです。

マスバランス方式のプラスチック認証制度は、2011年にバイオ燃料を対象としていた認証制度RSBが認証対象にバイオマス原料を含む製品にまで拡大したことが始まりです。加えて、2013年にはバイオマス原料だけでなくリサイクル原料(再生原料)を配合したプラスチック製品を対象として、BASFとTÜV SÜDが認証スキームを構築しました。以降、ISCC、UL、REDcert等、様々な認証機関においてスキームが構築・運用され、各種プラスチックへのマスバランス方式の適用が進んでいます。*1

企業側の活動としては、2010年代後半より欧州企業を中心にマスバランス方式のプラスチック認証の取り組みが先行し、2020年以降日系企業においてもマスバランス方式のプラスチック認証取得が加速しています。この流れを受け、2022年9月に日本環境協会が、エコマーク認定基準における「バイオマス由来特性を割り当てたプラスチック」の取扱方針を策定しました。*2

今後目にする機会が増えることが予測される、マスバランス方式のプラスチック認証制度をご紹介します。

*1:マスバランスモデルの概要と工業材料への適用における課題(鈴木太一ら)(2024)

*2:エコマーク認定基準における「バイオマス由来特性を割り当てたプラスチック」の取扱方針

マスバランス方式のプラスチックを認証する主な制度

マスバランス方式のプラスチックを認証する制度には、大きく2つの方向性があります。

A. バイオマス原料と再生原料どちらも対象とする
B. 再生原料に特化している

代表的な、A. バイオマス原料と再生原料どちらも対象とする制度は、ISCC PLUS、RSB Global Advanced Products、REDcert2 です。

ISCC PLUS ISCC PLUSは、ドイツISCC System GmbHが運営する制度です。ISCCはInternational Sustainability and Carbon Certificationの略称です。ISCCは市場毎に異なる認証制度を適用しており、EU域内のバイオ燃料を対象としたISCC EU、EU域外のバイオ燃料と世界各国のバイオエネルギー・食品・飼料・化学品/技術用途を対象としたISCC PLUSが運用されています。

*参考:ISCC PLUS Version 3.3

ISCCロゴISCCロゴ

RSB Global Advanced Products RSB Global Advanced Productsは、スイスRoundtable on Sustainable Biomaterials (RSB)が運営する制度です。
REDcert2 REDcert2 はドイツREDcert GmbHが運営する制度です。

いずれの制度においても、信頼性担保のために認定された第三者認証機関が審査・監査を行っており、また、台帳管理システムによってトレーサビリティが管理されています。主な認定第三者認証機関として、Control Union、SGS、TÜV SÜD等が挙げられます。

代表的な、B. 再生原料に特化した制度は、UL 2809、ecoloop等です。

UL 2809 UL 2809はアメリカの認証機関UL Solutionsが運営する規格です。UL Solutionsは製品の安全性に関わる様々な規格を提供しています。再生プラスチック・金属に関わる規格が、UL 2809: Environmental Claim Validation Procedure (ECVP) for Recycled Content(再生含有物の環境性能検証手順)です。製品中の再生原料(プレおよびポストコンシューマーリサイクルを含む)の含有率を評価・検証するための規格です。
ecoloop ecoloopはドイツecocycle GmbHが提供する、2018年より運用が始まった比較的新しい規格です。EU市場を中心に適用されており、プラスチックを対象としています。

ISCC PLUS認証を取得した旭化成のエンジニアリングプラスチック

旭化成のエンジニアリングプラスチックでは、ISCC PLUS認証*を取得した製品の販売を行っています。

ザイロン™ マスバランス方式によるバイオマスPPE

変性PPE樹脂 ザイロン™では、マスバランス方式によるバイオマス由来のメタノール/フェノールを原料とするPPEとして、ISCC PLUS認証を取得しました。
バイオマス認証PPEは、既存の石化由来のPPEと同等の性能(耐熱性・難燃性・軽量・絶縁性・寸法安定性・低吸水性など)を保持しているため、幅広い用途でのサステナビリティ対応に貢献することができます。

テナック™ マスバランス方式によるバイオマスPOM

POM樹脂テナック™は、マスバランス方式によるバイオマス由来のメタノールを原料とするPOMとして、ISCC PLUS認証を取得しました。
POM樹脂テナック™バイオマス認証グレードは、既存の石化由来のPOMと同等の性能(優れた摩擦・摩耗特性、強度・剛性、耐油・耐有機溶剤性など)を保持しているため、幅広い用途でのサステナビリティ対応に貢献することができます。

レオナ™ リサイクルPA

PA樹脂レオナ™は、旭化成工場から発生した規格外品を原料としたリサイクルペレットをコンパウンド加工するスキームにおいて、ISCC PLUS認証を取得しました。
規格外品を原料としたリサイクルペレットを用いることで、CFP(Carbon Footprint of Products)値を抑えつつ、ポリアミド樹脂の優れた性能(耐熱性・機械的強度など)はそのままに、お客様のご希望にあわせた設計が可能です。

*ISCC(International Sustainability and Carbon Certification):持続可能性および炭素に関する国際認証であり、ISCC PLUSはEU域外で生産され全世界に販売される主にバイオベースや再生由来等の原料について、サプライチェーン上で管理・担保する認証制度です。

ご興味のある方はぜひ一度お問い合わせください。

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