製品の軽量化、高精度化に寄与
変性PPE樹脂

概要と特徴
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ザイロン™とは

ザイロン™は、旭化成の変性PPE(m-PPE、変性ポリフェニレンエーテル)樹脂です。

変性PPE樹脂は、PPE(ポリフェニレンエーテル) 樹脂と他樹脂を混合したポリマーアロイの総称です。PPEは、耐熱性・難燃性・絶縁性・寸法安定性・低吸水性に優れた、比重が小さいエンジニアリングプラスチック(エンプラ)で、非晶性の熱可塑性樹脂です。

旭化成は、原料 (2,6-キシレノール) からPPEを生産し、他樹脂とアロイ・コンパウンドした豊富なグレードラインナップを展開しています。アロイ毎に各種グレードをご用意し、変性PPE樹脂のアジアNo.1メーカー*としてお客様のニーズにお応えします。

*出典:富士経済「2023年エンプラ市場の展望とグローバル戦略」の販売量より。

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ザイロン™の特徴

PPEは、耐熱性、機械的強度に優れる 「エンジニアリングプラスチック (エンプラ)」 に分類されます。

プラスチックの分類と変性PPE樹脂ザイロン™の位置付け

PPEは、エンプラの中でも「非晶性」の「熱可塑性樹脂」であり、変性PPE樹脂 ザイロン™は、下記の性質を併せ持つエンプラ材料です。

耐熱性

PPEはガラス転移温度約220℃を有する、耐熱性の高い樹脂です。変性PPE樹脂ザイロン™においては、ガラス転移温度90~220℃まで幅広い材料ラインナップを有しています。また、耐熱水性・耐加水分解性にも優れます。

変性PPE樹脂ザイロン™の耐熱性
変性PPE樹脂ザイロン™のガラス転移温度

難燃性

PPEは酸素指数 (燃えるために必要な酸素量)が高く、難燃化しやすい樹脂です。変性PPE樹脂 ザイロン™では、優れた難燃性を有するグレードを多数ラインナップしています。

各エンジニアリングプラスチック(非強化)の酸素指数比較
各エンジニアリングプラスチック(非強化)の酸素指数比較

絶縁性

PPEは、体積抵抗率(電気の流れにくさ)が高く、絶縁性に優れる樹脂です。変性PPE樹脂 ザイロン™では、耐トラッキング性等の電気特性に優れたグレードをラインナップしています。

各エンジニアリングプラスチック(非強化)の体積抵抗率比較
各エンジニアリングプラスチック(非強化)の体積抵抗率比較

寸法安定性

PPEは、線膨張係数がエンジニアリングプラスチック中で最も小さく、成形収縮率も小さい樹脂です。変性PPE樹脂 ザイロン™では、寸法安定性、寸法精度に優れたグレードをラインナップしています。

各エンジニアリングプラスチック(非強化)の線膨張係数比較
各エンジニアリングプラスチック(非強化)の線膨張係数比較

低吸水・耐酸アルカリ性

PPEは、吸水率が低い樹脂です。そのため、変性PPE樹脂 ザイロン™の各グレードでは吸水による物性変化・寸法変化が小さい特徴があります。

各エンジニアリングプラスチック(非強化)の吸水率比較
各エンジニアリングプラスチック(非強化)の吸水率比較

また、優れた耐熱性も有するため、耐熱水性、耐加水分解性にも優れています。以下表では、高温高湿環境下3,500時間静置後のシャルピー衝撃強度において、ザイロン™の物性低下が小さいことを示しています。

さらに、酸やアルカリに対しての耐性も強く、環境への耐久力に優れています。

変性PPE樹脂ザイロン™(非強化)の耐熱水性、耐加水分解性
変性PPE樹脂ザイロン™(非強化)とPC(非強化)の高温高湿環境下3,500時間静置後のシャルピー衝撃強度比較

低比重

PPEは、エンジニアリングプラスチックの中で最も比重が小さく、軽量な素材です。
変性PPE樹脂 ザイロン™を使用することにより、部品軽量化に貢献できます。

各エンジニアリングプラスチック(非強化)の比重比較
各エンジニアリングプラスチック(非強化)の比重比較

低誘電率・低誘電正接

PPEは、低誘電率、低誘電正接な樹脂であり、伝送損失を小さく抑えられるため、情報通信分野の活用に適しています。また、PPEは高いガラス転移温度を有していることから、他の高耐熱性樹脂に比べて誘電特性の温度依存性が小さい点も特徴です。

各エンジニアリングプラスチック(非強化)の誘電特性比較
各エンジニアリングプラスチック(非強化)の誘電特性比較

変性PPE樹脂 ザイロン™では、PPE由来の低誘電特性と旭化成コンパウンド技術を組み合わせることで、幅広い誘電特性ニーズに適応可能です。これにより、高誘電率・低誘電正接グレードなど様々な誘電特性を持った、Dk/Dfコントロールグレードを備えています。

変性PPE樹脂ザイロン™の幅広い誘電特性
変性PPE樹脂ザイロン™の幅広い誘電特性

リワーク性

優れた耐熱性、耐加水分解性等の特徴から、変性PPE樹脂 ザイロン™はリグラインド時の物性低下が少ない材料です。以下表では、加速試験として100%リワーク材を使った衝撃強度を測定し、ザイロン™はリワークしても物性の低下が小さいことを示しています。

また、エンジニアリングプラスチックの中で最も比重が小さく、軽量な素材であることから、製品を作る際に素材使用量が少なく、再生利用と合わせてザイロン™を使用することにより、製品サイクルトータルとしての素材使用量を減らすことができ、環境負荷低減に貢献することができます。

変性PPE樹脂ザイロン™(非強化)のリグラインド性
変性PPE樹脂ザイロン™(非強化)とPC系材料(非強化)のリグラインド特性 シャルピー衝撃強度保持率比較

ザイロン™が選ばれる理由

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アジアNo.1の変性PPE樹脂サプライヤー*

変性PPE樹脂 ザイロン™は、PPEを、他樹脂とコンパウンドしたものです。

旭化成は、原料 (2,6-キシレノール) からPPEを生産し、各種樹脂 (ポリスチレン:PS、ナイロン:PA、ポリプロピレン:PP、ポリフェニレンサルファイド:PPS、ポリフタルアミド:PPA等) とコンパウンドしたポリマーアロイをラインナップしています。各アロイ毎に各種グレードをご用意し、変性PPE樹脂のアジアNo.1メーカー*として幅広いニーズにお応えします。

*出典:富士経済「2023年エンプラ市場の展望とグローバル戦略」の販売量より。

変性PPE樹脂ザイロン™ラインナップ
変性PPE樹脂ザイロン™の幅広いラインナップ

また、変性PPE樹脂 ザイロン™には、主材であるPPEを他樹脂とコンパウンドしていない 「PPE原料 (PPE粉末)」 もございます。
PPE原料は、高耐熱・低比重で、電気特性・難燃性に優れ、ポリスチレンとの優れた相溶性を備える非晶性ポリマーです。

ザイロン™PPE原料の取り扱いグレード
ザイロン™PPE原料の取り扱いグレード
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技術サポート

世界各国に拠点を設けており、グローバルにお客様をサポートいたします。
さらに、設計シミュレーション技術である「樹脂CAE技術」により、お客様の製品設計・開発をサポートいたします。

→ 技術サポートについての詳細はこちら

旭化成エンプラのテクニカルサポート

用途事例

太陽電池ジャンクションボックス
次世代通信
ザイロン™の主材であるPPEは、低誘電率、低誘電正接の特長を有しており、高周波帯域での伝送損失低減に効果が期待できます。PPEの低誘電特性と、独自のコンパウンド技術を掛け合わせることで、スマートフォンのシャーシや基地局のアンテナカバーなどの誘電特性ニーズにお応えします。
環境エネルギー
耐熱性、難燃性、低吸水性、寸法安定性、絶縁性に優れており、高温高湿下での機械的物性、寸法変化が小さいことがザイロンの特徴です。こうした特徴から、太陽電池ジャンクションボックスなどに採用されている他、低イオン溶出性にも優れることから燃料電池部品(定置用)にも採用されています。
住宅設備・OA機器・電機/電子部品
寸法安定精度、難燃性、耐熱性から、インバーターカバーやプリンター機構部品などの筐体や内部シャーシに適しており、設計自由度が高く、高精度な部品に使用可能です。比重が小さい為、部品の小型化・軽量化に寄与します。
自動車
リレーブロック、NiMH電槽部品、車載カメラや、電気自動車(EV)のバッテリーのセル間のスペーサー・バスバーカバーなど各種部品で採用実績がございます。近年は、燃料電池車(FCV)向けの提案も強化しています。

グレード紹介

ザイロン™PPE/PSグレードは、難燃性および耐熱性において、幅広いグレードをラインナップしています。フィラーを最適化することによって、ご要望に応じ、各種の機械的性質(剛性、靭性、低反り性、寸法精度等)を有するグレードや、導電性を有するグレード、制振・静音性に優れた「Vシリーズ」、飲料水接触用途向け「Wシリーズ」などを提供しています。

ザイロン™アロイグレードは、汎用からスーパーエンプラまでの結晶性樹脂とPPEをアロイ化させて、 PPEの特徴にさらに耐熱性や耐薬品性など、各結晶性樹脂の特徴を付与したものです。低反り・耐薬品性に優れたPP/PPE、耐熱・低吸水・耐油性を有するPA/PPE、高耐熱・低バリ・低反りのPPS/PPE、高耐熱・低吸水を達成するPPA/PPEのラインナップがございます。

下表中のグレード名をクリックして頂くと、各グレードの詳細データがご覧いただけます。さらに、ボタンをクリックして頂くと、各シリーズの特徴がご覧いただけます。

他樹脂とコンパウンド(混錬)加工する前のPPE樹脂単体(粉体)の取り扱いもございますので、お気軽にお問い合わせください。

また、カーボンニュートラル実現に向け、ザイロン™では、バイオマス原料由来のPPEの開発や、再生プラスチック(PCR)率15-40%のリサイクルグレードの開発に取り組んでいます。

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製品データ/使用のヒント※取扱い上の注意

ザイロン™(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)取扱い上の注意

<ご注意>
この資料の記載内容は現時点で入手できる資料、情報、データに基づいて作成しており、新しい知見により改訂されることがあります。また、注意事項は、通常の取り扱いを対象としたものなので、特殊な取り扱いの場合には、用途・用法に適した安全対策を実施の上、ご利用下さい。

1.取り扱い上の注意

ザイロン™の取り扱いの要点を以下に示します。ザイロン™の安全な取り扱いにご活用下さい。なお、ザイロン™のグレードごとの取り扱い上の注意点につきましては、安全データシートを別途作成しています。ご使用に際しては、安全データシートをお読みください。ザイロン™以外で貴社が用いる添加剤等の安全性につきましては、貴社にて調査下さるようお願いいたします。

A.作業上の注意点
ザイロン™の作業時にペレット、溶融樹脂及び溶融時に発生するガス等との接触・吸入を避けるようにお気をつけ下さい。万一、接触・吸入した場合の応急処置を以下に示します。

  • ・眼に入った場合
    眼に入った場合は、こすると刺激があったり、角膜を傷つけるため、こすらずに清浄な水で最低15分間良く洗い、異常があれば医師の手当を受けて下さい。
  • ・皮膚に付着した場合
    通常は、水や石鹸で洗い、溶融物が付着した場合は、直ちに清浄な水で冷やして下さい。皮膚上の固まった樹脂を無理に剥がさずに、医師の手当を受けて下さい。
  • ・吸入した場合
    通常は、人体への直接の影響はありませんが、粉塵などを吸い込んだ場合は、清浄な水でよくうがいをしてください。溶融物からのガスを吸って気分が悪くなった場合は、新鮮な空気のある場所に移動し、回復を待ちます。回復しない場合は、医師の手当を受けて下さい。
  • ・飲み込んだ場合
    できるだけ吐き出し、異常があれば医師の手当を受けて下さい。

B.安全衛生上の注意点
ザイロン™の乾燥、溶融時に発生するガスの、眼や皮膚への接触・吸入を避けるようにお気をつけ下さい。 また、高温の樹脂には直接触れないようにして下さい。乾燥、溶融の各作業においては、局所排気装置の設置や保護具(保護眼鏡、保護手袋等)の着用が必要です。

  • ・設備上の対策
    成形作業では、加熱溶融によってガスが生じる恐れがありますので、これらを排出するために有効な局所排気装置等を設置して下さい。
  • ・呼吸用保護具
    発生ガス、ヒュームを吸入する可能性がある場所での作業は有機ガス用マスクを着用して下さい。樹脂製品の機械加工、サンディングなど粉塵の発生する作業では防塵マスクを着用して下さい。
  • ・保護眼鏡
    作業時は、サイドシール付きの樹脂製保護眼鏡、樹脂製ゴーグル等を着用してください。
  • ・保護手袋
    必要に応じて着用してください。特に、溶融した樹脂を取り扱う際は、やけど防止のため断熱性の良い手袋を使用して下さい。
  • ・保護衣
    通常の作業着で構いませんが、特に溶融した樹脂を取り扱う際は、長袖の衣服を着用し、やけど防止を心掛けて下さい。
  • C.燃焼に関する注意点
    ザイロン™は可燃性ですので、取り扱い・輸送・保管は、熱及び発火源から離れた場所で行って下さい。 火災時には強い熱、黒煙、炭酸ガス、一酸化炭素ガス、その他の有毒ガスを発生する恐れがあります。 消火には水、泡消火剤、粉末消火剤等の一般の火災と同じ消火剤が使用できます。 消火作業をする時には、防火服と呼吸器具を着用して下さい。

    D.輸送上の注意点
    梱包袋が破れないように、水ぬれや乱雑な取り扱いは避けて下さい。 万一、破袋してペレットが散乱した時は、滑って転倒しないように、特に注意するとともに、速やかに掃き取り、回収または廃棄して下さい。 空気輸送の際は静電気災害を防止する対策を実施して下さい。

    E.保管上の注意点
    ザイロン™は直射日光のあたる場所や、高温多湿の場所を避けて保管して下さい。 熱や発火源から離れた場所で保管するとともに、静電気災害を防止する対策を実施して下さい。

    F.廃棄上の注意点
    ザイロン™は埋め立て又は焼却により処理できます。 埋め立てる時は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に従って、公認の産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合には、その団体に処理を委託して下さい。 焼却する時は、焼却設備を用いて大気汚染防止法等の諸法令に適合した処理を行って下さい。

    2.適合規格に関して

    ザイロン™には、ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主規制基準、厚生省告示370号または、UL、CSA、電取法に各々適合するグレードがあります。 詳細は弊社担当までご連絡下さい。

    3.その他

    ご使用に関しては、工業所有権にもご注意下さい。

    カタログのデータは定められた試験法に基づいて得られた代表値であり保証値ではありません。個々の用途に最適なグレードを選ぶ目安としてご参照下さい。なお、これらの数値は物性改良のため変更することもあります。

ザイロン™に関するご質問・ご相談・サンプル
のご依頼をお待ちしております。

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