• TOP
  • トレンド
  • 5G通信基地局に適した低誘電特性の樹脂材料

5G通信基地局に適した低誘電特性の樹脂材料 5G

Summary

  • 5G通信の特徴は、(1) 超高速、(2) 超低遅延、(3) 多数同時接続です。
  • 5G通信では減衰が大きい高周波電波(Sub6帯や準ミリ波帯)を利用するため、大きな伝送損失が課題となります。この対応として、使用する素材の見直しが必要とされています。
  • 旭化成は、5G通信基地局向けの樹脂材料として、変性ポリフェニレンエーテル樹脂『ザイロン™』をご提案します。

旭化成からのご提案

モバイル通信の進化と5G

Mobile networks have evolved in tandem with progress in cellular device technology and the explosive growth in data-transmission volumes.


1980年代にアナログ無線通信技術で1G通信が始まり、モバイル音声通話が可能になりました。

1990年代には2G通信でデジタル化が進み、メールを中心としたデータ通信が広く普及しました。

2000年代には、3G通信でのデータ通信が急激に高速化し、静止画の受発信やブラウザ閲覧が可能になり、通信規格も世界共通のデジタル方式となりました。

さらに、2010年頃からは3.9GでLTE (Long Term Evolution) 方式も含めたスマートフォンが普及し始め、2015年頃からはLTE Advanced方式の4G通信が広く普及し、現在に至ります。

 

そして、次の通信規格として期待され、普及が進むのが5G通信です。

※参照:総務省 「第5世代移動通信システム (5G) の今と将来展望

モバイル通信の進化と5G

5Gの特徴と課題

5G通信の最大の特徴は、つぎの3点です。

5G通信の特徴

  • eMBB (enhanced Mobile Broadband):超高速・大容量
  • URLLC (Ultra-Reliable and Low Latency Communications):超高信頼性・低遅延
  • mMTC (massive Machine Type Communication):多数同時接続

5G通信の最大通信速度は、4Gの10倍以上となる見込みです*1

 

5G通信ではこれまでの世代と比べて高周波帯を使用します。日本の4G通信では、プラチナバンド (700~900MHz帯) と主要バンド (1.5~3.5GHz帯) の周波数が使われてきましたが、5G通信ではSub6帯 (3.7、4.5GHz帯) や準ミリ波帯 (28GHz帯) の周波数の使用が中心となります。一方で、高周波化することによる課題も出てきます。電波の減衰は周波数の2乗に比例するため*2、高周波になるほど電波は減衰しやすく届きづらくなります。電波の届きづらさは通信の繋がりにくさの原因となり、快適な通信を阻害する一要因となります。

 

そのため、5G通信では通信基地局をこれまでより多く設置し通信環境を整える必要があります。

 

*1:4Gは1Gbps, 5Gは10Gbps  
*2:フリスの伝達公式

5Gの特徴と課題

5G基地局に求められるスペック

5G通信の製品は、高周波帯域(Sub6帯域や準ミリ波帯域)での電波の減衰を抑えることが重要です。

 

そこで、5G通信の製品と部品を構成する素材の比誘電率(Dk)・誘電正接(Df)がポイントになります。比誘電率や誘電正接は電波の減衰性と関係があり、これらの数値が高いと「電波が素材に吸収されやすく」なるため、電波損失 (ロス) に繋がり、通信感度に影響します。

 

また、基地局においては、筐体やアンテナに用いる材料(素材)の電波の減衰性はもちろん重要ですが、より効率良く電波を送るために、その部品・場所に合わせた比誘電率と誘電正接の制御が必要となります。

 

さらに、基地局では金属またはセラミック製のフィルターを多数個配置するため、重量増になり設置工数および作業負荷が大きくなります。さらに、5G通信になれば基地局設置数も増加するため、その工数・作業負荷・コストの増大は無視できないものになります。そのため、比誘電率と誘電正接の制御だけでなく、カバー・筐体・フィルター・アンテナの樹脂化による軽量化、および複雑形状一体化が5G通信環境整備に貢献しています

旭化成からのご提案

5G通信向け樹脂材料「ザイロン™」

旭化成は、5G通信基地局向け材料として、変性ポリフェニレンエーテル樹脂 (変性PPE樹脂) ザイロン™をご提案します。

ザイロン™とは

ザイロン™は、ポリフェニレンエーテル (PPE) と他樹脂を混合したポリマーアロイの総称です。

旭化成が製造販売を開始したのは1979年であり、エンジニアリングプラスチックにおいて長い歴史を持ち、幅広いポリマーアロイのラインアップを備えています。

 

ザイロン™は、優れた複数の特性を有します。

高い耐熱性を備えた上、難燃性と絶縁性、寸法安定性、耐水性にも優れ、なおかつ低比重といった特長があります。さらに、相手となる他樹脂の特長も生かしながらPPEを添加することによって、PPEの特長との相乗効果を狙ったポリマーアロイです。

 

ザイロン™はこれまでに、自動車や家電をはじめとする幅広い業界の部品や筐体にご使用いただいてきました。

特に自動車においては、低比重という特徴に加えて、耐熱性や難燃性も備えることから、搭載部品の軽量化を目的として、頻繁に採用いただいています。

変性PPE樹脂ザイロン™ラインナップ

変性PPE樹脂ザイロン™の幅広いラインナップ

活用のメリット

ザイロン™の母材であるPPEは、低誘電率、低誘電正接という特徴を備えることから、情報通信分野での適用に適しています。

またPPEは、高いガラス転移温度を有しており、他の高耐熱性樹脂に比べて誘電特性の温度依存性が小さい点も特徴です。これは、さまざまな温度環境を想定される中で安定した通信品質を確保する上で、重要な利点です 。

各エンジニアリングプラスチック(非強化)の誘電特性比較

各エンジニアリングプラスチック(非強化)の誘電特性比較

5G基地局 アンテナカバー(レドーム)向け樹脂材料

ザイロン™開発材「AA181-7」

5G基地局のアンテナカバー(レドーム)向けとして、ザイロン™開発材「AA181-7」のご活用を提案いたします。

 

ザイロン™開発材「AA181-7」は、耐加水分解性および高衝撃性に優れ、オールカラーで難燃性 UL94V-0 を達成しています。

 

最外装であるアンテナカバー(レドーム)は軽量化や耐候性の要求に加え、電波透過性を向上させるために低誘電特性が求められます。ザイロン™開発材「AA181-7」では、従来の材料では困難であった難燃性 (UL94V-0) と低誘電特性の両立を実現しています。

通信アンテナカバー・MIDアンテナ基材

変性PPE樹脂「ザイロン™」 難燃規格UL94V-0と低誘電の両立

これまで、アンテナカバー(レドーム)の材料にはポリカーボネート (PC) などが使用されてきましたが、誘電特性の観点では十分ではありません。旭化成のザイロン™開発材「AA181-7」をアンテナカバー(レドーム)に採用することで、その課題解消が期待できます。

 

ザイロン™は、このほかにもカバー向け材料で耐光変色抑制グレード等の開発も進めており、5G基地局アンテナカバー(レドーム)の幅広いニーズにお応えすることが出来ます。

*ザイロン™開発材「AA181-7」はあくまで開発段階の仮称であり、今後、正式な製品化に際してグレード名が変わることをご了承ください。

ザイロン™開発材「AA181-7」レドーム電波透過性シミュレーション結果

ザイロン™開発材「AA181-7」レドーム電波透過性シミュレーション結果

5G基地局 キャビティー型RFフィルター向け樹脂材料

5G基地局キャビティー型RFフィルター向けとして、ザイロン™のグレード開発を進めています。

 

基地局では金属またはセラミック製のRFフィルターを多数個配置するため重量増になり、設置工数および作業負荷が大きくなります。さらに5G通信になれば、基地局設置数も増加します。これにより、部材のさらなる軽量化が求められることになります。

ザイロン™で開発を進める5G基地局キャビティー型RFフィルター向けグレードは、高耐熱、良メッキ性、金属に相当する低線膨張性を実現しており、RFフィルターの樹脂化に貢献しうる材料です。

5G基地局 キャビティー型RFフィルター向けザイロン開発グレード

幅広い温度帯で安定した低線膨張係数を実現しており、様々な温度帯の環境下での寸法安定性が求められる金属製品の軽量化に最適な樹脂材料です。

幅広い温度帯で安定した低線膨張係数を実現

幅広い温度帯で安定した低線膨張係数を実現

誘電カスタムコンパウンドのご紹介

PPE特有の低誘電特性と旭化成独自のコンパウンド技術を組み合わせて、誘電特性をコントロールしたグレードの開発を進めています。

 

誘電体材料には波長短縮効果があることが知られており、高誘電率(高Dk)且つ低誘電正接(低Df)の材料をアンテナに使用すると小型化が可能であったり、位相シフトのための誘電体移相器(フェーズシフト)に使用されたりと様々なシーンで応用されております。

 

一方で、高Dkと低Dfはトレードオフの関係にあり、両方を実現することは一般的には困難な技術です。ザイロン™は、この高Dk/低Dfを実現させるためにDk/Dfコントロールグレードを開発しており、前述したようなアンテナの小型化や、基地局で使用される誘電体移相器(フェーズシフター)に好適な材料となっております。

基地局向け誘電体移相器

基地局向け誘電体移相器

お客様のニーズに合わせた誘電特性グレードをご提案することで、次世代通信基地局の更なる高機能化に貢献します。

変性PPE樹脂ザイロン™の幅広い誘電特性

変性PPE樹脂ザイロン™の幅広い誘電特性

  • 変性PPE樹脂ザイロン™の製品ページはこちら

動画でご紹介

変性PPE樹脂を活用した5G通信の課題解決 ウェビナー動画

「変性PPE樹脂を活用した5G通信の課題解決」ご紹介動画
こちらの動画は2021年12月2日にSpecialchemにて開催しましたウェビナーの録画映像です。音が出ますのでご注意ください

5G / IoT 通信展 旭化成の取り組み 視聴動画

「旭化成の5G通信向け材料:ザイロン™」ご紹介動画
こちらの動画は、2021年10月27日~29日に開催された「5G/IoT通信展」にて撮影したものです。
  • 変性PPE樹脂ザイロン™の製品ページはこちら

5G通信基地局向け材料「ザイロン™」に関する
ご質問・ご相談・サンプルのご依頼をお待ちしています。

お問い合わせ