インタビュー
樹脂CAE
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~軽量化・コストダウンを実現可能に~
2023.06.23
技術・製品紹介
旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎、以下「当社」)と国立大学法人東京工業大学工学院 廣川研究室(以下「東工大」)は、Beyond 5G時代を見据えて利活用が期待される導波管スロットアレーアンテナの樹脂化に向けた共同研究を開始しました。
近年、無線通信の高速化・大容量化に適したミリ波の活用が促されていますが、ミリ波帯アンテナを製造する際、機械加工の限界や材料の損失などの問題が生じ、これらの問題を総合的に考慮した導波管スロットアレーアンテナの開発が進められています。導波管スロットアレーアンテナは金属製の導波管に多数のスロットアンテナ素子を設けアレーアンテナとして動作させる構造で、マイクロストリップアレーアンテナ※に比べミリ波帯では高性能となる反面、製造コストが高く、重量が重いなどの課題があります。そのため、衛星や軍事用途での使用が主であり民生用途での使用機会は少ないのが現状です。近年、その性能の高さからドローンや基地局用アンテナ、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems, 先進運転支援システム) への適用が検討されていますが、重量やコストの課題がボトルネックになり採用が進んでいません。そこで、当社と東工大は金属メッキした変性PPE(m-PPE、変性ポリフェニレンエーテル)樹脂「ザイロン™」で導波管を形成し、重量と製造コストを抑える試みに取り組んでいます。
アレーアンテナの特性比較
樹脂製アンテナの試作にあたっては、「ザイロン™」の開発品グレード「AA105-52」を使用しています。同グレードは高耐熱性に加え、幅広い温度帯で安定した低線膨張係数を実現しており、導波管スロットアレーアンテナの様な精密性が求められる金属部品の樹脂化に適したグレードです。
物性表
線膨張係数比較
また、ザイロン™はメッキ性に優れており、下図の評価結果の通り、ポリカーボネートやポリプロピレンといった他材料と比べ、銅との密着性が良好です。
銅と基材の密着評価(テープによる銅剥離有無)
第一段階の取り組みとしては、入力側が縦横2×2の4開口、出力側も同様の4開口を有する樹脂製アンテナ用回路を作成し、金属製アンテナ用回路との性能比較を実施しました(設計周波数帯域はミリ波帯を想定)。
樹脂製アンテナ用回路
ハイブリッド構造
わずかな誤差でも回路特性へ影響を及ぼすため、高い寸法精度とメッキ精度が求められる中、「ザイロン™」製アンテナ用回路はこれらの課題を解決出来ました。重量については金属製アンテナ用回路と比較して約40%の軽量化を達成し、回路特性については出力側振幅範囲が下記の回路特性比較の通り一部の高い周波数帯を除き設計値内に収まりアルミ切削品と同等の性能を発揮しました。反射量も-15dB以下で損失も低く、良好な結果で、同モデルでは金属製アンテナ用回路と同程度作動することが確認出来ました。
(2023年6月開催「COMNEXT 第1回 次世代通信テクノロジー国際展」にて樹脂製アンテナの簡易モデルを出品しました)
今後はさらにスケールアップした試作を実施し、より実用に即した実験を計画しております。
回路特性比較
※マイクロストリップアレーアンテナ: 誘電体基板の表面に放射素子、裏面に地導体板を印刷した平面アンテナ
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