蓄電池の小型化・軽量化や製造工程の効率化に貢献する樹脂材料 エネルギー
Summary
- 蓄電池とは、充電を行うことで繰り返し使用することができる化学電池のことです。
- 蓄電池は、2050年カーボンニュートラル実現のために、電化社会のエネルギー貯蔵手段として、鍵となる技術と捉えられており、今後、爆発的に生産が増え、普及が進むことが見込まれます。モビリティの電動化に用いる車載用蓄電池としてだけでなく、社会基盤を支えるインフラとしての定置用蓄電池として用いられます。
- 旭化成では、蓄電池の製造工程の効率化や、民生用・定置用蓄電池のさらなる有効活用に向けた樹脂材料をご提案します。
蓄電池とは
蓄電池とは、充電を行うことで繰り返し使用することができる化学電池のことです。充電池、二次電池とも呼ばれます。
■電池の大別3つ
電池と呼ばれるものには様々な種類があり、「物理電池」、「生物電池」、「化学電池」の3種に大別できます。
物理電池は、熱や光などのエネルギーを電気エネルギーに変換する変換装置であり、太陽電池がその代表です。
生物電池は、生体触媒や微生物による生物化学的な変化によって電気エネルギーを発生させる装置です。生物太陽電池等、まだ研究段階であり、今後の展開に期待がかかっています。
化学電池は、電池の内部に充填された化学物質が酸化・還元反応によって生じる電気エネルギーを利用する電池です。化学電池の中で、「一次電池」、「二次電池」、「燃料電池」に分けることができます
■一次電池と二次電池
一次電池は、一度放電してしまったら捨ててしまう、使い切りタイプの電池です。一次電池の種類として、マンガン電池、アルカリ電池等の乾電池等があります。
これに対して、充電を行うことで繰り返し使用することができる電池が二次電池です。二次電池には、古くから用いられてきた鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッカド電池等があります。
その二次電池の中でも、近年需要が爆発的に広がっているのがリチウムイオン電池(Li-ion Battery、LIB、LiB)です。1985年に旭化成工業の吉野彰氏が、炭素材料を負極とし、コバルト酸リチウムを正極とするリチウムイオン二次電池の基本概念を確立したことが始まりであり、他の蓄電池に比べてエネルギー密度が高いことから、ノートパソコンや携帯電話に広く普及し身近なものになりました。また、積み重ねてきた実績と高いエネルギー密度が理由で、EV(電気自動車・電動車)の駆動用電池として利用が進んできました。
特に直近の環境としては、2050年カーボンニュートラル実現のために、蓄電池は電化社会のエネルギー貯蔵手段として、鍵となる技術と捉えられています。蓄電池は、モビリティの電動化に用いる車載用蓄電池としてだけでなく、社会基盤を支えるインフラとしての定置用蓄電池として用いられます。
定置用蓄電池の中でも、再生エネルギー(再エネ)の主力電源化のために電力の需給調整に用いることが重要視されています。カーボンニュートラル達成のためには再エネを拡大していく必要がありますが、再エネ拡大の課題の1つとして、気象条件によって発電出力の変動が大きく、需要と供給の一致が難しい需給調整が挙げられます。この需給調整の課題に対して、発電・送電・需要の全ての領域において、蓄電池の活用が有効な対策として期待されています。また、インフラとしての定置用蓄電池の重要な用途として、各所施設のバックアップ電源があり、通信基地局やデータセンター等のデジタル社会基盤を支えるために不可欠なものとなっています。
蓄電池市場
■用途別
蓄電池世界市場は、車載用・定置用ともに大きく拡大する見通しです。
特に、車載蓄電池市場はバッテリーEV(BEV)市場の急速な拡大によって急拡大することが予想されます。
一方、定置用蓄電池市場も継続的に成長していく見込みです。経済産業省によると、蓄電池の世界市場は、2019年全体で約5兆円、その内、車載用が約4兆円(容量ベース200GWh)、定置用が約1兆円(30GWh)でした。そして、2030年約40兆円、内、車載用が約33兆円(3,294GWh)、定置用が約7兆円(370GWh)、2050年約100兆円、内、車載用が約53兆円(7,546GWh)、定置用が約47兆円(3,400GWh)の市場となる見込みです。
※参照:経済産業省 「蓄電池産業戦略 中間とりまとめ」

関連ページ
- 「車載バッテリー向け樹脂材料」の詳細はこちら
■プレイヤー別
市場のプレイヤーとしては、中国・韓国メーカーがシェアを拡大させており、日本メーカーはシェアを落としています。
車載用・定置用ともに、日本メーカーは本市場初期に高いシェアを有していました。しかし、CATL社等の中国メーカー、サムスンSDIやLG化学等の韓国メーカーによる積極的な投資・顧客獲得活動により、中国・韓国メーカーがシェアを拡大させた結果、2020年時点で車載用・定置用ともに中国・韓国メーカー合計で半分以上の世界シェアを有する市場となっています。
※参照:経済産業省 「蓄電池産業戦略 中間とりまとめ」

■地域別
地域別生産能力をみると、現在中国が最大の生産地域であり、今後さらに生産能力を拡大させていく計画です。
加えて、欧州も急速に生産能力を拡大させる計画です。
主要国各国において、蓄電池に対する積極的な政策支援が実施されており、特に欧州では欧州域内で持続可能なバッテリーバリューチェーンが構築されるよう規則作りが進められており、蓄電池の欧州域内生産・域内循環の誘導が進められています。
※参照:経済産業省 「蓄電池産業戦略 中間とりまとめ」

旭化成からのご提案
蓄電池は今後、爆発的に生産が増え、普及が進むことが見込まれます。
旭化成では、蓄電池の製造工程の効率化や、民生用・定置用蓄電池のさらなる有効活用に向けた樹脂材料をご提案します。
※車載用蓄電池に関するご提案につきましては、別ページ「車載バッテリー向け樹脂材料」をご確認ください。
蓄電池の製造工程の効率化を実現する、エンジニアリングプラスチック発泡材料 サンフォース®
サンフォース®は軽量、断熱性という発泡体ならではの性能に加えて、難燃性、寸法精度、薄肉成形などの、従来の発泡体を超えた機能を併せ持ったm-PPE(変性ポリフェニレンエーテル)のザイロン™をベースとした発泡体です。
発泡体でありながら、難燃性が必要な部分にも使用できる成形素材がサンフォース®です。サンフォース®は、ULのプラスチック・部材向け難燃規格「UL-94」にて、非常に高いレベルの難燃性である「V-0」の認定を、発泡ビーズ材料として世界で初めて受けています。


サンフォース®は軽量な発泡体であり、自己消火性(UL94 V-0)があるという特徴から、既にEVの電池パック周辺部品での採用・検討が進んでいます。また、これに加え、リチウムイオン電池(LiB)の製造及び輸送に用いるトレイにも活用いただけます。サンフォース®を用いたトレイは、次のような点での貢献が期待できます。
1.セル製造や輸送時の安全性の向上:UL-94 V-0の難燃性を持つ発泡素材の使用
2.トレイの軽量化:射出樹脂材料と比較して軽量化可能(10倍発泡グレードの比重0.1kg/L)
寸法公差や耐薬品性に関するデータもございますので、お気軽にお問い合わせください。
製品の小型化・軽量化に貢献する、レーザー溶着・印字性に優れたポリアミド樹脂レオナ™
ポリアミド樹脂レオナ™ は強度・剛性、耐熱性、耐薬品性に優れたエンジニアリングプラスチックです。ガラス繊維(GF)のような充填材(フィラー)によって強化することで、強度・剛性、耐久性、寸法安定性を向上することができます。
今回、レーザー溶着・レーザー印字といった二次加工性に優れたレオナ™をご紹介いたします。この材料を用いることによって、例えば、バッテリーを納める筐体の小型化・軽量化が可能です。
レーザー溶着は、部品を接合するための二次加工技術の1つです。
溶着技術は電子基板や電池パックのように高エネルギー密度のものを筐体内に密閉・封止した製品を生産する際に活用されますが、振動溶着や超音波溶着などの振動を伴う溶着方法では筐体内部の部品を破損する恐れがあります。(一方でネジ止めによって固定する場合、ボス部分のスペースが必要になってしまいます。)
レーザー溶着を用いることにより、筐体内部の部品にダメージを与えずに、製品サイズを小型化・軽量化することが可能となります。

レーザー溶着のしくみ
また、製品のトレーサビリティ・信頼性を担保するためには、情報の表示方法が重要です。
レーザーマーキング(印字)は、レーザー照射によって表層の樹脂を発泡させることで、製品表面に消えにくい表示を施す技術です。
その他、一般的な表示方法としてシール貼付も挙げられますが、シールの剥離や印字が薄くなるという難点があり、表示の長期維持の観点でレーザーマーキングは優れた表示技術といえます。
旭化成のポリアミド樹脂レオナ™SN11Bは、高強度・高剛性、ハロゲンと赤リンを含まない難燃剤によりUL94 V-0(0.75mm)取得、耐トラッキング性(CTI)600V(PLC 0)、という性能に加えて、優れた溶着強度を有しています。
さらに、鮮明性、微細印字性、印字のタクトタイムに優れたレーザーマーキング性を持っていることから、製品の小型化・軽量化に貢献します。

レオナ™SN11Bを使用したレーザーマーキングサンプル
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