レーザー溶着に適した樹脂材料 レーザー溶着

Summary

  • レーザー溶着とは、部品を接合するための二次加工技術の1つで、レーザーを照射して樹脂の境界面で熱を発生させ、溶着・溶接する接合工法です。
  • レーザー溶着では、「レーザー透過性樹脂(透過材)」と「レーザー吸収性樹脂(吸収材)」とを組み合わせ、この2つの樹脂部品を過度な圧力で押し付けながらレーザーを照射し、その熱エネルギーで樹脂を溶融させて接合します。
  • 様々な接合・溶着方法の中で、レーザー溶着には、ダメージレス、省スペース・小型軽量化、良外観・高意匠、信頼性、無振動・静音性といったメリットがあります。
  • 旭化成は、レーザー溶着向けの樹脂として、レーザー透過性に優れたポリアミド樹脂 レオナ™をご提案します。

旭化成からのご提案

レーザー溶着とは

レーザー溶着とは、部品を接合するための二次加工技術の1つで、レーザーを照射して被着物 (樹脂・プラスチック) の境界面で熱を発生させ、溶着・溶接する、熱溶着の接合工法です。

レーザー溶着のしくみ・プロセス

レーザーを用いた透過吸収法による樹脂溶着は、プラスチックのレーザー透過性を利用した技術で、「レーザー透過性樹脂(透過材)」と「レーザー吸収性樹脂(吸収材)」とを組み合わせて使用します。この2つの樹脂部品を過度な圧力で押し付けながらレーザーを照射し、その熱エネルギーで溶融させて接合します。

レーザー溶着のしくみ

レーザー溶着のプロセス

  1. レーザー照射:透過材と吸収材を重ねてセットし、透過材側からレーザーを照射する。
  2. 吸収・光熱変換:レーザーが透過材を通り抜け、吸収材で吸収・発熱する。
  3. 熱伝達:吸収材が発熱とともに膨張し、透過材側に接して熱が伝わる。
  4. 固化:伝わった熱により透過材が溶け、界面に溶融プールが形成されて接着する。

レーザー溶着のメリット

樹脂・プラスチックの接合・溶着には、レーザー溶着をはじめ、熱板溶着、振動溶着、超音波溶着、接着剤、スナップフィット、ネジ留めなど、さまざまな方法があります。

 

その中で、レーザー溶着には下記のようなメリットがあります。

レーザー溶着のメリット

  • ダメージレス:製品に振動や超音波等を直接与えないため、基板など内部の精密部品に機械的なダメージを与えません。
  • 省スペース・小型軽量化:ネジやスナップフィットのスペースが不要です。
  • 良外観・高意匠:バリが少なく、摩耗粉は出ません。
  • 微小部位の溶着加工が可能:レーザー照射部以外には熱影響を与えません。
  • 信頼性:振動溶着や用音波溶着で発生する樹脂粉のコンタミ回避、接着剤の劣化が無いため長期間の強度・気密性に優れます。
  • 無振動・静音性:溶着時に音や振動が発生せず、作業環境に優れます。

溶着・接合方法の種類・長所・短所

レーザー溶着が可能な樹脂の組み合わせ

レーザー溶着は、プラスチックのうち、加熱により軟化する性質を持つ「熱可塑性樹脂」で行います。

 

レーザー溶着の際には、透過材側の樹脂のレーザー透過率がポイントとなります。レーザー溶着において、透過材側の樹脂のレーザー透過率が低いと、樹脂がレーザーを吸収し溶けてしまうため、一般的に透過材側樹脂には約20%以上のレーザー透過率が必要となります。着色前の熱可塑性樹脂のほとんどは白色や透明であり、厚みの条件を満たせば、十分な透過率が得られるため、レーザーによる接合ができます。

 

また、レーザー溶着では、一般的に、ダイオードレーザーやYAGレーザーといった、可視光よりもやや長い800~1200nm前後の波長のレーザーが使用されています。この波長領域でレーザー透過性と吸収性が確保できれば、接合が可能であり、色素や吸収剤を選ぶことで、着色された樹脂製品であっても接合することが可能です。

 

主な組み合わせは、下図の通りです。

レーザー溶着の種類と材料

旭化成からのご提案

レーザー透過性に優れたポリアミド樹脂 レオナ™ SNシリーズ

レーザー溶着加工に適した樹脂材料として、レオナ™SNシリーズをご提案します。レオナ™SNシリーズは、環境と安全を考慮したノンハロゲン・赤燐フリーの難燃ポリアミド樹脂で、レーザー透過性・接合強度に優れます。

ノンハロゲン難燃ポリアミド樹脂 レオナ™ SNシリーズとは

旭化成のポリアミド樹脂レオナ™ は強度・剛性、耐熱性、耐薬品性に優れたエンジニアリングプラスチックです。ガラス繊維のような充填材(フィラー)によって強化することで、強度・剛性、耐久性、寸法安定性が向上します。

 

レオナ™ SNシリーズは、環境と安全を考慮したノンハロゲン・赤燐フリーの難燃ポリアミド樹脂です。レーザー透過性・接合強度に優れ、さらに、高強度・高剛性、UL94 V-0(0.75mm)取得、耐トラッキング性(CTI)600V(PLC 0)と、優れた性能を有します。

レオナ™ SNシリーズの優れたレーザー透過性・接合強度

レオナ™ SNシリーズは、ノンハロゲン難燃ポリアミド樹脂の中でも、特に高いレーザー透過性・接合強度を有します。さらに、特殊黒着色を施した場合でもレーザー透過性・接合強度を維持し、高い漆黒性で外観に優れます。

レオナ™ SNシリーズのレーザー透過性

レオナ™SNシリーズの中でも、ガラス繊維25%強化品であるSN11Bのレーザー透過率 (940nm)を、一般的なノンハロゲン難燃ポリアミド樹脂(ガラス繊維含有量はSN11Bと同じ25%)と比較したところ、ナチュラル色で約2倍、黒色で3-4倍でした。

レーザー透過率(光線波長:940nm)

材料を透過して接合部位に到達するエネルギー量が多いため、レオナ™SNシリーズを用いたレーザー溶着加工には、

 ・高速加工による生産性の向上が可能

  (下記動画参照。※動画では強い光が出ますのでご注意ください。)

 ・低出力レーザーでも加工可能

 ・表面に焦げを発生させない

という利点があります。

加工速度の比較:レオナ™SNシリーズ(左)と一般ノンハロゲン難燃ポリアミド樹脂(右)
(※動画では強い光が出ますのでご注意ください。)
 

レオナ™ SNシリーズのレーザー溶着時の接合強度

下図のとおり、レオナ™SNシリーズをレーザー溶着させた複合品は接合強度に優れています。

レーザー溶着加工出力と接合強度

レオナ™SNシリーズの漆黒性(特殊黒着色を施した場合)

レオナ™SNシリーズは、レーザーのみを透過させる特殊黒着色を施した場合でも、一般ノンハロゲン難燃ポリアミド樹脂よりもレーザー透過率が高く、接合強度の高さも維持しています。

さらに、一般ノンハロゲン難燃ポリアミド樹脂よりも漆黒性に優れており、外観を重視される部品にも好適です。この漆黒性はレオナ™SNシリーズの表面平滑性に起因しており、光を乱反射させる表面の微細な凹凸が少ないためです。

レーザー溶着試験片と表面拡大図

  • 環境と安全を考慮したハロゲン&赤燐フリーPA66次世代難燃グレード「レオナ™ SNシリーズ」の資料ダウンロードはこちら

レオナ™のレーザー溶着加工例

バッテリーケースの小型化・軽量化

バッテリー(蓄電池)を納める筐体にポリアミド(PA)樹脂レオナ™を使用し、レーザー溶着加工を行うことで、筐体の小型化・軽量化が可能です。

振動溶着や超音波溶着などの振動を伴う溶着方法では筐体内部の部品を破損する恐れがあり、また、ネジ止めによって固定する場合、ボス部分のスペースが必要になってしまいますが、レーザー溶着を活用すると、筐体内部の部品にダメージを与えずに、製品サイズを小型化・軽量化することができます。

バッテリーケース
  • 車載用蓄電池向け樹脂材料の詳細はこちら
  • 民生用・定置用蓄電池向け樹脂材料の詳細はこちら

電装部品の溶着界面の焦げ低減

従来、溶着が困難であった、電装部品向け難燃グレードのレーザー透過率を向上させたことで、より低エネルギーでのレーザー溶着が可能になりました。
低出力で溶着できるようになったことで、溶着界面の焦げが低減しました。

レーザー溶着 電装部品への難燃グレード活用例

  • 「耐トラッキング性などに優れたコネクタ向け樹脂材料」の詳細はこちら

その他の想定用途

バルブ、ポンプ、電動パーキングブレーキ、ECUケース、車載カメラなど

 

 

レーザー溶着に対応する材料・グレードの詳細に関しましては、下記よりお問い合わせください。
また、各種レーザー溶着を想定した設計時の注意点等につきましても、お気軽にお問い合わせください。


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