技術・製品紹介
公開日:
2026.06.01

技術・製品紹介
発泡ポリスチレン(EPS)や発泡ポリプロピレン(EPP)を使った設計で、「高温環境になると、想定していた寸法や強度が発現しない」そんな壁に直面したことはないでしょうか。
本記事では、変性ポリフェニレンエーテル(mPPE)系ビーズ発泡体「サンフォース™」を例に、発泡体の耐熱性を“設計の観点”でどう評価すべきかを解説します。
発泡体は軽量化や形状自由度の点で有用な材料であり、発泡ポリスチレン(EPS)や発泡ポリプロピレン(EPP)も多くの分野で使われています。
一方で、高温環境を伴う用途や工程では、寸法が安定しない、強度が想定以上に低下するといった理由から、設計が成立しないケースも見られます。こうした問題は「耐熱性不足」と整理されがちですが、発泡体の耐熱性は、単一の温度指標だけでは評価できません。応力条件や使用環境によって、材料の挙動は大きく変わります。
次章では、発泡体の耐熱性を評価する際に有効な指標を用い、条件の違いが材料挙動にどのような差を生むのかを整理します。
発泡体の耐熱性は、評価条件によって異なる挙動を示します。本章では、条件の異なる3つの評価指標を用いて、EPS、EPPおよびmPPE系ビーズ発泡体の耐熱挙動を比較します。

加熱寸法変化試験は、応力がかからない条件における材料の寸法安定性を評価する指標です。
EPSやEPPでは温度上昇に伴って寸法変化が生じやすくなるのに対し、mPPE系ビーズ発泡体は高温下でも寸法変化が小さく、安定した挙動を示します。

HDTは、荷重が加わった状態での耐熱挙動を評価する指標です。
応力が存在すると、材料が剛性低下しやすくなり、EPSやEPPでは比較的低温域から変形が進行します。一方、mPPE系ビーズ発泡体は、荷重下でも変形が抑えられた挙動を示します。

高温下での圧縮応力保持率は、高温条件において圧縮応力がどの程度低下するかを評価する指標であり、高温到達時の材料剛性の違いが各材料の挙動差として現れます。
前章で示した評価結果の差は、各発泡体を構成する樹脂の熱的特性に由来します。
EPSは、ガラス転移温度(Tg)が約100℃付近に位置する材料です。この温度域を境に剛性が変化するため、高温条件では使用条件によって挙動が変わります。
EPPは、融点が約160℃と高い一方で、ガラス転移温度(Tg)は約0℃付近に位置しています。そのため、無荷重条件では安定した挙動を示す一方、荷重が加わる条件では剛性低下が顕在化しやすくなります。
mPPE系ビーズ発泡体は、これらと比べてTgがより高く、高温域においても剛性変化が緩やかな特性を示します。
この違いが、前章で示した各評価結果の差として現れています。
各材料のTgおよび融点の代表値(一般的な文献値)
| 発泡ポリスチレン | 発泡ポリプロピレン | mPPE系発泡体 | |
|---|---|---|---|
| ガラス転移温度 | 約100℃ | 約0℃ | 130℃< |
| 融点 | 非晶 | 約160℃ | 非晶 |
サンフォース™の特長は、mPPE系樹脂としての耐熱特性を、ビーズ発泡体として利用できる点にあります。発泡体でありながら、高温条件下でも寸法安定性や応力保持の観点で設計余地を確保しやすく、射出成形品やブロック材とは異なる設計自由度を得ることができます。

また、サンフォース™は発泡倍率3.5〜15倍の低倍率領域を中心としたラインナップを有しており、高温環境下での剛性や構造成立性が求められる用途において、軽量化と部材機能の両立を図りやすい材料です。
これにより、「ビーズ発泡体は高温では使えない」とされてきた条件においても、材料選択の新たな選択肢となります。
エンジン周辺部品では、高温環境下で部材に拘束や圧縮応力がかかる条件が想定されます。発泡体による断熱・軽量化を図りたい一方で、高温時の剛性低下が設計上の課題となるケースがあります。
サンフォース™は、高温領域での剛性変化が緩やかなmPPE系ビーズ発泡体であり、エンジンオイルセパレータ周辺の断熱用途における選択肢の一つとして検討できます。

CFRP構造体では、軽量化と剛性確保の両立を目的として、コア材を用いたサンドイッチ構造が広く検討されています。一方で、成形工程や使用環境において高温条件が加わる場合、コア材には寸法安定性や形状保持性が求められます。
サンフォース™は、高温条件下においても寸法変化や剛性低下が生じにくい特性を有しています。そのため、CFRPのコア材として用いることで、軽量化を維持しつつ、高温成形工程や使用時の設計余地を確保しやすくなります。

発泡体の耐熱性は、評価条件によって見え方が変わります。高温かつ応力が加わる条件では、ガラス転移温度が設計成立性を左右します。
本記事が、高温環境における発泡体設計を見直すきっかけになれば幸いです。
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