技術・製品紹介
導波管スロットアレーアンテナ向け樹脂材料(低コスト・高寸法精度・良めっき)
XP650(AA105-52)・DG040
導波管スロットアレーアンテナは、通常、金属製の導波管に多数のスロットアンテナ素子を設けアレーアンテナとして動作させる構造のミリ波帯アンテナで、近年、その性能の高さからADAS等への適用が検討されています。
旭化成と東京科学大学(旧:東工大)・廣川研究室は、金属メッキしたザイロン™XP650(AA105-52)で導波管を形成し、導波管スロットアレーアンテナの重量と製造コストを抑える試みに取り組んでいます。
ザイロン™XP650(AA105-52)およびザイロン™ DG040は高耐熱性に加え、幅広い温度帯で安定した低線膨張係数を実現しており、導波管スロットアレーアンテナのような精密性が求められる金属部品の樹脂化に適したグレードです。
ザイロン™製の導波管アンテナのメリットとしては以下が挙げられます。
- アンテナ性能向上(空気を導波路にしてロス低減)
- 加工費削減(めっき前処理・バリ取り費用不要)
- 軽量化(対アルミ40%軽量化)
- 形状再現性(高金型転写性、低線膨張係数)
アンテナ種別 | マイクロストリップ | 導波管スロット(金属製) | 導波管スロット(ザイロン™+めっき) | 導波管スロット(PPS+めっき) |
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コスト | ○ | × | ○ | × |
重量 | ○ | × | ○ | △ |
性能 | × | ○ | ○ | △ |
寸法安定性 | – | ○ | ○ | × |
めっき性能 | – | ○ | ○ | × |
項目 | 単位 | 試験方法 | 試験条件 | ザイロン™ | PPS+GF40 | |
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XP650 (AA105-52) |
DG040 | |||||
比重 | – | JIS K7112 | 23℃ | 1.56 | 1.52 | 1.66 |
荷重たわみ温度 | ℃ | ISO 75-1 | 1.8MPa | 253 | 188 | >260 |
線膨張係数(MD/TD) | ×10^-5 mm/mm/℃ |
ISO 11359 | -30~65℃ | 1.5/2.8 | 2.2/3.1 | 1.5/4.5 |
成形収縮率(MD/TD) | % | ASAHI KASEI method |
150×150×2㎜ | 0.17/0.22 | 0.28/0.34 | 0.30/0.67 |
引張強さ | MPa | ISO 527-2 | 23℃/50%RH | 122 | 66 | 165 |
引張破断(呼び)ひずみ | % | ISO 527-2 | 23℃/50%RH | 2 | 2 | 3 |
曲げ強さ | MPa | ISO 178 | 23℃/50%RH | 175 | 103 | 253 |
曲げ弾性率 | MPa | ISO 178 | 23℃/50%RH | 12,810 | 9,500 | 15,000 |
シャルピー衝撃強さ | kJ/m² | ISO 179 | 23℃/50%RH | 4 | 2 | 9 |
また、ザイロン™はめっき性に優れており、下図の評価結果の通り、ポリカーボネートやポリプロピレンといった他材料と比べて、銅との密着性が良好です。

一般的に難めっき材と言われているPPSと比べて、ザイロン™のめっき工程は加工費用が安く抑えられる為、製品のコストメリットに繋がります。