エネルギー価格上昇が企業活動に影響

2022.08.31

業界情報

ロシアのウクライナ侵攻への制裁措置でG7が原油禁輸処置に

2022年5月8日、主要7ヵ国(G7)はロシアのウクライナ侵攻への対抗、制裁手段として、オンライン首脳会議でロシア産原油を輸入しないことで一致した。ロシア産の原油のうちG7向けは約3割を占めるとみられ、ロシアの経済にとっては大きな痛手になるとみられる。6月2日にはEUとしても9割禁輸を決定した。
各国のエネルギーのロシアへの依存については大きな差がある(表)。日本は石油の4%、天然ガスの9%をロシアに依存するが、米国やカナダは小さい。最も大きな比率を占めるのはドイツだ。日本は自給率が低いこともあり、禁輸には慎重な姿勢を取っていたが、G7での結束を重視することになり、禁輸に踏み切ることを首相が表明した。今後日本にとって、原油価格のさらなる上昇と、中東への依存度が高まることなどの地政学的な面が懸念される。OPECプラスは7月からの原油増産を決めたが、米国なども天然ガスを増産するなど対応が望まれる。

表:G7各国のロシアへの依存度 出典:資源エネルギー庁

電力価格は上昇傾向に、寒波や地震の影響も

電気料金は21年度後半から上昇傾向が続いていた(図)。スポット市場価格はkWh当たり10円程度で推移していたが、1月中旬には原油価格の上昇と円安、寒さのため需要が増えたこともあり30円を超えた。3月にはすでにウクライナの影響もあったが、追い打ちをかけるように3月16日に発生した福島県沖の地震で複数の火力発電所が停止したことで、3月下旬には60円を超えた。すでに各電力販売会社は22年7月の電力価格が史上最高値になることを明らかにしている。

図:電力のスポット市場価格 出典:資源エネルギー庁を元にARC作成

新電力破綻で企業活動に影響も、電力自給率アップが必要に

16年の電力自由化以降、少しでも電気代を減らすために、大手電力会社から新電力会社に切り替える企業や家庭が増えたが、22年になり、新電力が給電事業から撤退する事態が顕在化した。新電力の多くは自前の発電所を持たず、電力市場から調達した電力を一般家庭や企業に、大手電力よりも安く売ることで利益を得ていた。しかし、21年度後半からスポット市場価格が上昇したため、年単位で契約している価格では逆ザヤが発生した。例えば福岡県のホープエナジーは3月に300億円の負債を抱えて破産手続に入り、熊本電力は4月末で電力供給を停止したため、これらとの契約先は九州電力に給電を申し込んだ。大手電力は家庭とは給電契約義務があるが、法人は九電から契約を拒否される事態が発生した。申し込み全ての法人には給電できないなどのためで、契約拒否は他の大手電力にも拡大している。22年4月、経産省は大手電力と契約がない法人に割高な料金でも必ず電力を供給する「最終保障供給」の利用が急増したことを公表した。電力価格は通常の1.2倍に設定されているが、より高くなる方向で改定の動きもある。
エネルギー危機が世界中の企業活動に影響を及ぼし始めている。ロシアへの依存度が高いドイツでは、大手化学企業のBASFはロシア産天然ガスを購入し、6割を発電に、4割を化学品原料として使用し、もしロシアからの輸入が無くなると工場が停止すると公表している。再エネ比率を高めるため外部から再生可能電力を購入する企業もあるが、今後は値上げになる可能性も高い。敷地や屋根に太陽光パネル、電池を設置して自社電源の比率を高める企業も増えているが、環境面以外に、エネルギー安全保障の観点からも重要性が増しそうだ。

この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの 松田英樹 が執筆したものです。

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