技術開発が進む空中ディスプレイ

2023.02.01

業界コラム

空中ディスプレイ関連の2製品が評価されてCEATEC AWARD 2022に選出

2022年10月にアジア最大級のIT技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC 2022」が開催された。この展示会に出展した製品/サービスを表彰する「CEATEC AWARD 2022」に京セラとアルプスアルパインの空中ディスプレイ関連製品が選ばれた。

①簡単な操作を実現したアルプスアルパインのインターフェース
アルプスアルパインの「ステルス空中インターフェース」は、手をかざすと操作用のタッチパネルが表示され非接触で操作できる。パネルは大理石などの模様をつけて見やすくした。デザイン性を損なわず、非接触で簡単に操作でき、さまざまな場面で活用できることが評価され、CEATEC AWARD 2022のキーテクノロジー部門準グランプリを獲得した。タッチパネルを操作できたかどうかは、独自の高感度静電容量センサ「Air Input」が判定する。Air Inputは24年ごろ、空中インターフェースは25年ごろの量産を目指している。

図1:アルプスアルパインの「ステルス空中インターフェース」

②小型化、高精細・高画質を実現した京セラの空中ディスプレイ
京セラの「高精細 空中ディスプレイ」は独自設計のミラーを折りたたむように配置して、小型化と高精細・高画質を実現した。映像は用途に合わせて飛び出し距離を調整でき、映し出された映像は指で動かすことができる。高精細・高画質を生かした用途の拡大が見込めることが評価され、CEATEC AWARD 2022のトータルソリューション部門準グランプリを獲得した。京セラは医療やゲーム、アミューズメントなどの分野での利用も想定して開発を進めており、26年までの量産体制構築を目指している。

図2:京セラの「高精細空中ディスプレイ」

タッチパネルとしての利用が進む

空中ディスプレイは光の反射を利用して映像を表示する技術である。センサや触覚の技術と組み合わせ、タッチパネルとして非接触でパネルが操作できることから、非接触の入力パネルとして利用され始めた。例えば、17年11月に「変なホテル ハウステンボス」がチェックインの手続きを行う操作パネルとして採用した。セブンイレブンは22年1月からキャッシュレスセルフレジとして実証実験を始めた。22年3月に広島県庁も空中ディスプレイを使ったアバター遠隔接客システム「TimeRep」を導入し、職員の呼び出しや遠隔接客に使用している。

また、他の技術と組み合わせた利用を目指すものも出てきている。例えば、マクセルは開発中の3D映像表示技術と組み合わせて、メタバースのイメージを操作するパネルとしての市場開拓を目指している。

図3:マクセルの「空中ディスプレイ」

空中ディスプレイのメリットと課題、そして今後

空中ディスプレイのメリットの一つは非接触で操作できることである。掃除や除菌の手間が不要なため、新型コロナ対策などの衛生面が重視される場での活用が期待されている。スクリーンや特殊な眼鏡なしで立体映像を映し出せる簡易さもメリットである。また、隣や後ろから見えにくい空中ディスプレイは暗証番号入力時などのセキュリティ強化の手段としても注目されている。

ただ、課題もある。例えば、コストはシステム込みで1台数十万円と高額である。既存製品は輝度が低く見えにくい、映像がぼやけて見えるなど、映像品質には改良の余地がある。操作性にも課題がある。パネルを押す時のボタンの位置が分かりにくいため、ボタンに触れた時に音を出す、超音波技術などを使って触ったような感覚を与えるなど、操作しやすい工夫も必要である。

CEATEC AWARD 2022に選ばれた2つの製品は上記の課題に対する技術的な一つの方向性を示している。今後、開発に取り組む企業が増え、時には共同で開発し、時には競争することで、使いやすい製品が出来上がっていく。その結果、空中ディスプレイの利用範囲が広がり、日常生活の中で当たり前のように使われる社会がそう遠くない将来に訪れるかもしれない。

この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの 藤井和則 が執筆したものです。

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