CES2023のベストオブイノベーション

2023.04.07

CES2023

業界コラム

CES2023が米ラスベガスで開催された

2023年1月5日~8日にラスベガスでCES2023が開催された。22年はコロナ禍でオンラインとのハイブリッド開催であったが、今回はマスク着用などの制限はなく、コロナ前の状態に戻ったようだ。出展企業も173ヵ国、3,200社を超えた。これは、コロナ前の約4,200社には及ばないものの、22年比4割増である。中国からはコロナの影響で約500社とコロナ前の3分の1の出展となった。近年は自動車ショーのイメージが強く、自動運転などに関するさまざまなソリューションが多数展示されている。一方、技術テーマとしては、ゲーム&サービス、メタバース、サステナビリティ、イノベーション、モビリティ、ヘルスケアと多様である。

CESでは、優れた製品をたたえるコンテスト、イノベーションアワードプログラムを開催している。23年は、数多くの製品カテゴリで608製品が表彰された。また、最高の評価を得た23の製品にはベストオブイノベーションが贈られた。

ベストオブイノベーションで特徴的だったのは、韓国企業が10製品で獲得したことである。サムスンやLGなどの大手企業に加えスタートアップが複数受賞していた。日本は次世代型電動車椅子のWHILLが受賞した。

ここでは、ベストオブイノベーションに輝いた2製品を紹介したい。

自律ロボットで水道管内部の状態を把握し水漏れを防止する

フランスのスタートアップACWA Robotics は、地下水道管の水漏れ検出と防止に特化したロボット「Clean Water Pathfinder」を出展した。フランスでは、水道管の水漏れが原因で飲料水の20%が失われていると推定されている。しかし、この水漏れは、場所特定が難しく、修理がされないまま放置されているケースが多いと考えられている。この課題を解決するために開発された自律型ロボットは、ユーザーへの配水を中断することなく、プログラムされた水道網の経路に従い、埋設された水道管の中を自律的に移動して点検する(図.1)。配管内部の写真を撮り、装備したセンサーにより、配管の状態データ(残肉、腐食、マイクロクラックなど)や、水と水力に関するあらゆるデータ(圧力、水質、濁度など)を取得する。また、配管の位置をセンチメートル単位の精度で特定し、取得した配管データを関連付けし、データを本部のシステムに送信する。水道ネットワーク管理者は、写真と測定データをAIで分析し、漏れ、障害、または違法な接続の場所を検出することができる。このシステムは、パイプの状態を前例のないほど正確に評価できるので、管理者は修理や更新が必要な場所と時期を把握し、メンテナンスを計画的に実施され、結果として水漏れ防止が達成される。

配管を自律移動するロボット図.1 ロボットが配管を自律移動する様子 出典:https://www.acwa-robotics.com/solution/

電子セルフクリーニング技術でカメラレンズ表面の汚染物質を除去

韓国のスタートアップMicrosystemsは、光学センサー用に電子セルフクリーニング機能としてドロップフリーガラス(DFG)を適用したAI監視カメラを発表した。DFGは、独自のマイクロ流体技術により、雨水や霧、埃など、表面に発生したさまざまな汚れを迅速かつ効率的に除去することができる高機能ガラスである。

また、水滴だけでなく、雪や油、埃、粘度の高いハチミツも除去することができる。従来の機械的な技術(ワイパーで滴を払う)とは異なり、交流の電圧を加え表面上の滴を振動させ、表面張力を変化さることで、滴を移動させる。電極層と誘電体層からなるシンプルな構造で、外部駆動装置が不要のため、少ない電力消費で汚染物質を即座に除去できる(図.2)。

1秒以下の高速な動作速度と高い耐久性を持つDFGは、屋外に設置した監視カメラにおいて、降雨時でも常に鮮明なカメラ画像を可能にする。優れた特性を持つDFGは、自動車、スマートシティ、工場などでの利用が期待される。

滴を除去するしくみ図.2 DFGが滴を除去するしくみ 出典:https://www.microsystems.co.kr/index.php

この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの 成田誠 が執筆したものです。

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