振動解析

振動解析とは

振動解析とは、振動体の固有振動数と等しい振動を外部から与えたとき、非常に大きな振幅で振動する現象(共振)を避ける設計をするために実施する解析です。
振動解析は最も簡単な「モード解析(固有値解析)」と、「周波数応答解析」に大別されます。

Vibration analysis includes Modal analysis and Frequency response analysis.

モード解析(固有値解析)図1 モード解析(固有値解析)

周波数応答解析図2 周波数応答解析

振動解析でできること

振動特性(固有振動数や振動の大きさ)を得ることで、共振・騒音対策へ繋げることができます。

振動特性(固有振動数や振動の大きさ)を理解し、共振・騒音対策へ繋げる図3 振動特性

樹脂(ガラス繊維強化材)を用いた場合には、共振・騒音対策として、以下の方法が考えられます。
①固有振動数を使用範囲外の周波数にする
②振動増幅を抑える
ガラス繊維配向の検討やリブの追加・リブの厚みの変更によって、固有振動数を製品使用時の周波数帯から外すことが可能です(図4①)。 また、金属からの置き換えの場合、樹脂の粘弾性特性により制振効果が大きくなります(図4②)。

共振・騒音対策図4 共振・騒音対策

振動解析事例-1

固有振動数が繊維配向によって変えられることを示した事例を紹介します。 図5のように、120mm×80mm×2mmの平板を実際に成形した後、方向別に切り出し、中央加振法による減衰特性評価試験を実施しました。

試験片切り出しイメージと中央加振法イメージ図5 試験片切り出しイメージ(左)と中央加振法イメージ(右)

実験結果を図6の破線に示しました。0°方向(=繊維配向度が高い)ほど、固有振動数も高くなっていることがわかります。ここでは、0°方向と90°方向で1次の固有振動数が数百Hz変わっていることが分かります。

同様の試験を振動解析で再現した結果が図6実線になります。ここでは、Digimatを用いて異方性を考慮した材料データを作成し、解析に反映しました。 解析で得られた結果も、実験結果と同様に繊維配向度が高いほど固有振動数が高くなっており、実験と解析によって得られた固有振動数の差異はわずか5%でした。

ガラス繊維配向方向と減衰特性 図6 ガラス繊維配向方向と固有振動数の変化

振動解析事例-2

固有振動数を繊維配向によって変えられることは上述の通りですが、実際に繊維配向を変えるためにはどのような方法があるのか、Box部品の適用事例を用いて紹介します。

実際の製品で繊維配向を変えるためには、射出成形のゲート位置の変更が有効です。 図7のように、ゲートA(左)とゲートB(右)で比較評価したところ、図8のように、ゲートBに変更することで固有振動数が高い位置に変化しました。所望の固有振動数を得られない場合、ガラス繊維強化材ではこうしたアプローチが可能です。

ゲートA(左)とB(右)の充填パターン図7 ゲートA(左)とゲートB(右)の充填パターン

測定位置(左)と周波数応答解析結果図8 測定位置(左)と周波数応答解析結果(右)

振動解析事例-3

ガラス繊維配向だけでなく、リブの追加やリブの厚み変更によっても、固有振動数を変えることができます。 図9のように、リブを追加することで固有振動数は大きくなり、厚みを薄くすることで固有振動数は小さくなります(図10)。射出成形ではこのような形状変更が比較的しやすいため、解析しながらより良い形状を探索することが効果的です。

リブ追加による固有振動数の変化図9 リブ追加による固有振動数の変化

厚み変更(2.5mm→1.5mm)による固有振動数の変化図10 厚み変更(2.5mm→1.5mm)による固有振動数の変化